アメリカのロケット野郎たち X PRIZE Cup 報告
アメリカのニューメキシコ州ラスクルーセス空港で開かれた有人ロケットのお祭り、「Wirefly X PRIZE Cup 2006」を見に行ってきました。
以前紹介した能代宇宙イベントのアメリカ版と言ったところですが、日本人にはちょっと考えつかないような「有人ロケット」も登場します。
ロケットと言えば..
ロケットと言えば、みなさんが想像されるのは左の写真のようなロケットではないでしょうか。
X PRIZE Cupでは、確かにこのようなロケットの打ち上げ(高推力ロケット)もありましたが、メインは「有人ロケット」つまり人が乗ることのできるロケットです。
しかも、X PRIZE Cupの特徴は、NASAとかではなく、民間で開発されたロケットだということにあります。
民間開発の宇宙船第一号
よくご存知の方なら、民間の有人ロケットということで真っ先に思い浮かぶのが、左のSpaceShipOneでしょう。
これは、2年前、民間で製造されたロケットとして、初めて人間を載せて宇宙に到達した記念すべきロケットです。
ロケットトラック
しかし、X PRIZE Cupで言う「有人ロケット」というのは、そんな甘いものではありません。
とにかくロケットがついていて、人が乗っていれば、それは立派な「有人ロケット」です。
写真は、ロケットトラック。荷台に本物のロケットがついていて加速します。
X PRIZE Cupではトラックを固定した形のデモでしたが、実際に走らせる時は恐ろしいスピードで、多分ハンドルもブレーキも全く効きません。
でも、アメリカには、「燃料が切れるまでひたすらまっすぐに走っても、止まるまでの間になんの障害物もない土地」というのがゴロゴロあるわけです。
日本ではとても考えつかない、アメリカならではの発想と言えるでしょう
ロケットマン
この記事の冒頭の写真でご紹介したのがロケットマン。もちろんちゃんと飛んでいます。
私は野球を見ないのでよく知りませんが、大リーグの試合のアトラクションに登場したりするとのことなので、ご存知の方は多いかもしれません。
大人気で、飛行が終わった後は子供たちにすごい取り巻かれようでした。アメリカン・ヒーローです。
ロケットバイク
んでもって、極めつけはこのオニイチャン。
自転車の荷台にロケットを積んで加速しようってわけです。
残念ながら、デモは失敗に終わりましたが、会場からは大きな拍手が沸きました。
デモが2日目の後半で、再度チャレンジのチャンスがなかったのがとても残念ですが、それにしてもアメリカ人という奴は(笑)
月着陸船/垂直離着陸チャレンジ
X PRIZE Cupには、上のようなアトラクション色の強いもののだけではなく、真面目な試みも含まれています。
NASAは、今度の月探査において、民間企業の力を借りることを計画しており、その相手企業を選定するコンテストも、X PRIZE Cupの中で開催されました。
エントリーは3社あったようですが、実際に飛行できたのは、写真のアルマジロエアロスペース社のものだけでした。
月着陸船では、空中で静止して、水平に移動し、垂直に下降した後、垂直に上昇することが求められます。
デモでは、上昇と下降の順序が逆になりますが、それはともかく、上の写真のような物体が空中で静止しているわけです。
しかも舞台がニューメキシコ州の砂漠となれば、もうこれは誰が見たってUFOそのものです。
ちなみにこの写真はデモ時のもので、一切合成はありません。まあ、ついに人類は自分の手でUFOを作り出したっつうわけですね。
宇宙エレベータゲーム
宇宙に行く方法はロケットだけではありません。
宇宙まで届くエレベータ(宇宙エレベータ)があれば、それに乗ればいいわけです。
この夏公開された映画「仮面ライダーカブト劇場版」では、普通のビルにあるのと同じエレベータが宇宙まで伸びていましたが、そんな作り方をしたら、根元で全体の重さを支えるだけの頑丈な物質は、この世のどこにもありません。
したがって、エレベータはカーボンナノチューブのようなごく軽くて強い物質で作ったヒモ(テザー)を伝って上下する構造が考えられています。
宇宙エレベータには、他にもまだいろいろな課題があります。
エレベータが上がるためのエネルギー(主にはモーターを回すための電気)をどうやって供給するかもその一つです。
そこで、光やマイクロウエーブを下から当てることで、エレベータに電力を供給するしくみが考えられています。
X PRIZE Cupではこの実験も行われており、たくさんのチームが、さまざまな形のエレベータを高いクレーン車の先頭まで上げるためにエネルギーを供給するゲーム(宇宙エレベータゲーム)に参加していました。
※この項目内の記述に誤りがあり、皆様にご迷惑をおかけしたことをお詫びします。(2008.12.28修正済)
ロケット飛行機
X PRIZE Cupでは、NASAのF-18訓練/実験機など飛行機のデモフライトも行われていました。
最初の方でご紹介した民間初の宇宙船Space Ship Oneも、その次を狙っているロケットプレーンキスラー社の宇宙船も、分類としてはロケット飛行機(ジェットエンジンではなく、ロケットエンジンを積んだ飛行機)にあたります。
実際的には、宇宙に一番近い「有人ロケット」は今の所この「ロケット飛行機」ということができるでしょう。
会場で焼ソバと、焼き鳥と、カキ氷を売ってました。(笑)
別のコーナーでは展示とTシャツの販売も有。
日本で、宇宙観光旅行に行くことをすでに表明している人のうちの3人も焼そばなどを売っていたメンバーに含まれていますが、日本の民間宇宙旅行や、ロケットに関する15団体でTeamJAPANを結成し、展示と、フードコートへの出展を行っていました。(肖像権の関係で、写真は会場の準備風景です)
荷台にロケットくくりつけただけでも出場できるなら、日本チームとしても、他の出場形態も考えられたのではないかという意見があるかもしれませんが、ロケットを海外に持ち出すのは、武器輸出なんかがからんでくるようで、いろいろ難しいことがあるようです。
会員の一人でもあるのに、全くお店をお手伝いせずにデモの方だけ見ていた私としては、本当に申し訳ない限りです。皆様本当にご苦労様でした。スミマセン。
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コメント
目篭さん
記事のロケットマンですが、アメリカではロケットベルトとしてショーアップなどに多用されている様です。
私のブログで以前に書いていましたのでトラックバックを送らせていただきました。
http://rocketworks.jugem.jp/?eid=31#sequel
投稿: KZ Makino | 2006/10/29 13:14
KZ Makinoさん、コメント&トラバありがとうございました。
会場でさかんと「ロケットマン」とアナウンスされていましたがそれは人間の方で、彼が使っている(というか、背負っている)装置はロケットベルトと言うわけですね。大変勉強になります。
投稿: 目篭 | 2006/10/29 14:56
「アルマジロエアロスペース社」、
この企業名は最高ーですな。
投稿: しおじぃ | 2006/11/02 18:47
増田二三生様
以前も申し上げましたとおり、当記事と直接関係のない書込みを多数されておりましたので削除させていただきました。あしからずご了承ください。
投稿: 目篭 | 2008/02/29 00:42