電力線通信(PLC)の宇宙人?への影響
コンセントに差し込むだけで、工事をせずにLANが使える、電力線通信(PLC)という簡単で便利な仕組みがある。
だが、一方で、PLCは電波雑音を出すため、電波天文学やアマチュア無線など、いろいろな方面に影響があるという。
宇宙に影響があると聞いて、黙ってはいられません。さっそく調べてみました。矢追純一さんの「UFO探知機」を使って。
電力線通信(PLC)とは 家の中で、光ファイバーやADSLが引き込まれている場所と、パソコンが置いている場所が離れている場合、今までは、LANの工事をしてもらうか、無線LANで接続するしかありませんでした。
工事は大ごとですし、無線LANは難しい設定をしなければなりません。
電力線通信とは、家庭の中にある電気の配線を使って通信をするもので、光ファイバー側と、PC側に、それぞれ1つずつ、「PLCアダプター」というものをコンセントに挿すだけで通信ができるようになり、とても簡単です。
難しいことがわからなくても、誰でも設置できるので、家電売り場ではお年寄りなどに好評だそうです。
何が問題なのか
では、何が問題なのでしょうか。
家庭内の電線というのは、古くは明治時代からあるわけで、もともと通信に使うなどということは夢にも考えていないものですから、ここにインターネットなどで使う通信の情報を流すと、家庭内の電線がアンテナの役目をして、電波を発信してしまうのです。
この電波がちょうど、宇宙の星々から来るわずかな電波と同じ周波数だったり、アマチュア無線や短波放送とも同じ周波数だったりするので、観測ができなくなったり、雑音が入るといった影響が出るわけです。
インターネットなどの通信で使われているLANケーブルは、最初から通信専用に作られているので、このような電波を出さない工夫がされているのですが。
UFO探知機・ユータン では、実際に宇宙観測にどんな影響があるのでしょうか。
さすがに自宅に電波天文の設備はないので、調べようがありません。
でも、そんなことであきらめてはいけない。世の中にはこんなものがあります。
かの矢追純一さんが監修して作られたという、UFO探知機「ユータン」(左の写真)です。
「ユータン」のパッケージの裏の説明によれば、
・UFOが出現しそうだなーと思う場所で本体にあるボタンを短く一度押すと、「ユータン」がその場の空間をチェック!点滅具合によってUFO遭遇確率度合いを表します。
確率度・大 光が高速回転/音有
確率度・小 光が低速回転しフェードアウト
とのことです。
「ユータン」を開けてみると..
「ユータン」は電池交換のために開けられるようになっているので、ちょっと中身をみてみましょう。
(この「ユータン」は今回使ったものとは別ですので、分解したことでの実験への影響はありません)
左の写真の赤い部分がコイルです。わかりやすいように、ちょっと傾けてみました。
たぶん、その下の黒いものが、光り方を制御しているICで、コイルがある周波数の電波を受けると、電流が流れて、それによって、光り方が変わるのだと思われます。
「ユータン」がどんな電波に反応するように作られているかは不明ですが、電力線通信(PLC)を使っているときにこれが反応するようなことがあれば、少なくとも「UFO探査」に電力線通信(PLC)が影響する、とはいえるでしょう。
実験設備(光ファイバー側) 実験設備というほどのものではありませんが、今回使った我が家の環境をご紹介しておきましょう。
右側の白いものが、家庭の光ファイバー引き込み口の装置(メディアコンバーター)で、通信業者さんが設置したものです。
その右にまとめてあるのが家の外から来ている光ファイバーです。
右側にあるのがPLCアダプターで、これは親機です(上に銀色の丸いシールがついている方が親機)
これをメディアコンバーターとコンセントの間に、つなぐだけです。
特になにも設定する必要はありません
実験設備(パソコン側)
こちらはパソコン側です。
こちらも、コンセントとパソコンの間にPLCアダプターの子機(丸いシールのない方)をつなぐだけです。
こちらも設定は必要ありません。
たしかにとても簡単で、お年寄りに人気なのもわかります。
それでは実験をはじめましょう。
無通信状態
まずは電力線通信(PLC)を使わない状態で確認したものです。
(UFO遭遇確率度・小)の反応と思われます。
写真の左下にカーソルを持っていくと矢印が出ますので、クリックすると動きます。
音が出ると問題がある方は右側のボリュームを操作してください。
電力線通信(PLC)通信中
次が電力線通信(PLC)使用中のものです。
パソコン側のランプと、PLCアダプターのランプが点滅していることにご注意ください。
音が出ていると違いがはっきりわかるのですが、(UFO遭遇確率度・大)の反応と思われます。
宇宙からの電波は変えられない
電力線通信(PLC)は、とりあえずUFO探知機を誤動作させることはわかりました。
でも、相手が宇宙人なら、「電力線通信(PLC)があるので地球ではその周波数は使えないから、別の周波数にしてね」という話ができるかもしれません。
しかし、電波天文で観測しているのは、宇宙の星々が出すいわば自然現象です。
たとえば、太陽に「出す周波数を変えろ」と言っても無理な話です。
電力線通信(PLC)は、各方面への影響に関して最終的な議論が終わっていないのに、政府が強引に見切り発車してしまったと言われています。
今後の宇宙観測に深刻な影響が出ないことを祈るばかりです。
<補足>
まず、いないとは思うのですが、この実験を追試することはやめましょう。
みんなが追試をしたらその分だけ、影響ある電波が放出される可能性が高くなる、というわけなので。
ただし、他にやる人がいない前提であれば、逆に実験の状況については、記録として若干補足しておいたほうがよいでしょう。
まず、反応しやすい場所を探してから始めました。どこでも反応したというわけではありません。PLCに反応していたのだとすれば、たぶん天井裏などに家の電線が走っている真下とかに相当したところではないかと思います。
またそのような場所であっても、PLC通信を行っている場合にいつも「ユータン」が反応したというわけではありません。何回とかに一回という感じです。
ただし、私の経験では、PLC通信を行っている以外で「ユータン」が反応した記憶は、とりあえずありません。
もちろん、「ユータン」の仕組みはわかりませんので、たまたま常に、PLC通信以外の「何か」に反応しているという可能性もないわけではありません。
当然のことですが、この実験は目篭が独自で行ったものですので、結果について、「ユータン」製造元あるいは矢追純一さんに問い合わせるのはお控えください。
なお、言葉が長くなるので省略していますが、この記事で言っている「電力線通信」は正しくは「高速電力線通信」のことです。
電波天文へのPLCの影響について詳しく知りたい方は、こちらの記事などを参照してください。
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コメント
すばらしい実験ありがとうございます。確かに「ユータン」の原理は分かりませんが、影響があることは明らかのようです。これをお読みの皆様も決して安易に購入し追試、そして常時使用となりませんように。
投稿: かぜ | 2007/02/13 08:32
かぜさん
コメントありがとうございました。
確かに、こういう実験をやること自身が、影響のある電波を増やすことになりますよね。
大変失礼いたしました。また、気づかせていただいて大変感謝しております。
早速本文を書き換えました。
なお、目篭自身は引っ越したとき家に有線LANの工事をしてもらっておりまして、PLCは特に必要ありません。どうかご安心ください。
投稿: 目篭 | 2007/02/14 01:03