のしろケットちゃんたちの夏 2007能代宇宙イベント
ことしで3回目になった、宇宙の祭典『能代宇宙イベント』。第一回にくらべてずいぶんにぎやかになりました。今年から登場したイベントの公式マスコット「のしろケットちゃん」に案内してもらうことにしましょう。気になるロケットガールたちのその後もご紹介。
※この記事の映像はすべて音声付です。再生する場合はご注意ください。
第7回能代宇宙イベント 2011については、このブログではなく、
「のしろケットちゃん3D化計画」
の方に記事がありますので、お手数ですが、そちらをご覧ください。
のしろケットちゃんとは
以前の記事でも少し紹介 したことがありますが、『のしろケットちゃん』はロケットの妖精です。
(写真のTシャツの真ん中のイラストがそうです)
ちっちゃくて、自分の力だけでは宇宙に行くことができないので、学生たちのロケットに載せてもらって、宇宙に行くことを夢見ていて、能代宇宙イベントを応援しています。
詳しくは作者ノーカ(noshiroket)さんのブログを参照してください。
能代イベントにはノーカさんご自身が販売するグッズコーナもありました。写真の方がノーカさん。
元は、有名な某ゲームの3DCGをやられていた方なのですが、現在は能代で農業をされています。
地元でこんなすばらしいイベントがあるのを、なんとかして応援したい、ということで『のしろケットちゃん』のキャラクターを考案されたとのこと。
なお、グッズはネットでも購入可能です。
のしろケットちゃん立体化計画
のしろケットちゃんはイラストなので、そのままではロケットにのせることができません。
そこで、ノーカさんが主催して、のしろケットちゃんをいろいろな形で立体化するコンペを行いました。
『のしろケットちゃん立体化計画』です。
写真は惜しくも優勝を逃したコンペのエントリ作品たちですが、 実は目篭も参加しています。
写真左端のがそれで、目篭が3Dモデルを作り、それを秋田大のなまずさんが、モデラーという機械で立体化してくれました。(このお話は別ブログで)
コンペ優勝ののしろケットちゃん
そして、優勝したのがこののしろケットちゃん。
なんと、この能代イベントで、実際に東海大のロケットに載せて打ち上げられました。
写真の背景にチラっと見えているのが、その東海大のロケットです。
作者は能代市役所の方で、他の宇宙に縁のある自治体と共同で作っている「銀河連邦」という組織を担当されており、能代イベントでは「水ロケット教室」を開催されていました。
その、のしろケットちゃんを積んだ、東海大ハイブリッドロケットの打ち上げの瞬間です。
ロケットは燃料を酸化剤で燃やした勢いで飛ぶのですが、最初はその酸化剤(N20)ボンベの圧力が足らず、ボンベを変えて充填しなおすなど時間がかかりましたが、結果は大成功。
映像ですが、速度が早過ぎて、東海大の記録班でさえ追いきれなかったそうです。なので固定カメラの映像をどうぞ。発射の瞬間だけですが、その速さがわかります。
というわけでのしろケットちゃんは無事打ち上げ、回収されたのでした。
横田さんは開放機構担当
冒頭の写真でご紹介したのしろケットちゃんは、秋田大の横田さん。彼女はコスプレイヤーではなく、秋田大のロケットで開放機構を担当している人です。
開放機構は、ロケットが上空に来たときに、機体を開けて、中からパラシュートなどを出す重要なしくみです。
横田さんは、開放機構の実演も、のしろケットちゃんのコスチュームでやってくれました。ちなみに、後ろで立っている人が目篭の3Dモデルを立体化してくれたなまずさんですが、彼もフィギアの造形師などではなく、秋田大ロケットエンジニアの中心的人物です。
(画像変換に失敗して画像が縦長になってしまっています。実際はもっと縦が短いです。ごめんね(^^;))
その秋田大のロケットですが、打ち上げに成功、開放機構も無事動作して、パラシュートが開きました。
さてこののしろケットちゃんは? ええと、これはロケットの妖精、のしろケットちゃんです。STEP(筑波大学宇宙技術プロジェクト)の総帥みっちゃんさんに似ていますが、のしろケットちゃんです。(^^;)
すみません。いやがる彼女に無理やりのしろケットちゃんを着せてしまったのはこの目篭です。
(なにしろ各方面から「是非彼女をのしろケットちゃんに」という声が多かったもので。)
協力にとても感謝しています。なお、本件に関するすべての責任は目篭にありますので、ご意見等は目篭までお願いします。(^^)
その筑波大ですが、ロケットは無事発射され、分離機構は動作しましたが、パラシュートがうまく開かず、ハードランディングとなりました。なお、搭載機器は最後まで無事に動作していたとのことで、予定の計測はすべてできたとのことです。
司会は大活躍 ロケットの発射場所を「射点」といいますが、今年は、「安全の上にも安全を」ということで、「射点」が、一般観客席から更に遠くなってしまいました。
なので、観客にとっては、いつ打ちあがるのか、今ロケットがどのような状態にあるのか、すべては司会進行と、ナレーションを担当する中山さん(写真)の放送だけが頼りです。(音声が聞ける方はこの前の映像などに入っています)
単に放送だけではなく、観客席側で行われるエキシビションの進行も彼女に任されていて、丸二日間大活躍。彼女こそ今回の最高殊勲選手かもしれません。
エキシビションでは そのエキシビションでは、先ほどの秋田大の開放機構のような、各大学からの機構の説明の他に、(株)タイヨーさんの提供による、セーフティロケットの試射などもありました。
圧縮空気などを使った安全なロケットで、子供たちに大人気でしたが、写真は「ロケットガール」原作者の野尻抱介先生が、打ち上げを行う瞬間です。
有人ロケット研究会
有人ロケット研究会は、日本で、民間で、宇宙機の開発や宇宙旅行を実現しようとする団体で、このたびNPO法人に認証されました。
能代宇宙イベントに出展するということで、会員の田部井さんが、「のしろケットちゃんストラップ」を作ってくれました。(写真)
その有人ロケット研究会のブースで、「パルスジェットエンジン」の説明を聞く、さぁやんさん。
能代宇宙イベントの学生代表にして、UNISEC(University Space Engineering Consortium)の学生理事。他にも数々の伝説を持つ彼女ですが、本当に楽しそうに説明を聞いている様子が「ごく普通のロケット好きの女子大生」という感じなので、なぜか安心してしまいます。
パルスジェットエンジンは第二次大戦でドイツのV1号に使われたものですが、有人ロケット研究会では、ロケットを高空まで抱えていって発射する、第一段の有翼機(SpaceShipOneのWhite Knightみたいな)のエンジンとして考えています。
会場では他にもいろいろと..
UNISECといえば、今回の能代イベントでも、缶サット競技や、ローバ競技など毎年恒例の各種競技も行われていました(写真は缶サット競技参加者の記念撮影)
また、モデルロケット協会主催の、子供たちが打ち上げる小型モデルロケットや、高校生やロケット協会の方が打ち上げる大型モデルロケットの打ち上げも行われていました。
能代イベントも規模が大きくなり、今回はこちらの方までは追いきれませんでしたが、そのあらましについては第一回の記事をご参照ください。
ロケットガール第二期秋田チーム
追えなかった、ということではこの人たち。
今回は目篭自身が、ほんのすこし能代イベントにかかわってしまったせいもあって、彼女たちとは話をする余裕ができず、残念でした。
これは、終了後の懇親会での終了証授与式の写真。首相さん、さくらさん、シュガーさんなど、以前の記事(前編、後編)でおなじみの顔が見えます。
今回は公式ブログが充実しているので、メンバーや活動記録については、そちらの方をご参照ください。
そのロケットガール第二期秋田チームの打上げです。
打ち上げは成功しましたが、ロケットの推力が足らず、高度40mほどで落下。
開放機構自身は地面に到達後に正常に動作していたとの事です。前回のロケットガール第一期で課題となった開放機構についてのリベンジは成功したといえるでしょう。
ロケットエンジンの固体燃料は海外のものを購入しており、これが不良品だったことが推力不足の原因ではないかとのことです。
映像を東海大のものと比べると、明らかに推力のないのがわかります。
トリを飾るのしろケットちゃん
トリを飾るのしろケットちゃんは、ロケットガール第二期東京チームの外崎さんです。(東京チームのメンバーはこちらを、活動記録はこちらを参照)
実は彼女、本当にのしろケットちゃんをロケットに載せる担当でもあります。
しかも、そののしろケットちゃんは、他ならぬ目篭が3Dモデルを作ったものらしい。わくわく。
目篭原型ののしろケットちゃんです
これがそののしろケットちゃんです。東京チームのロケットから缶サットとして放出されます。
電飾をいっぱいつけて、「紅白の小林幸子みたいになっている」との事。
3Dモデルは目篭が作ったもので、実は、現時点で誰に立体化(切削)していただいたのかはわからないのですが、彩色は外崎さんのご友人の方がされたとの事です。ありがとうございました。
(完全に彩色されたモデルは、知る限りこれを含めて3つあり、残り2つの運命については、こちらをごらんください。)
東京チーム最後の追い込み
機体が組みあがり、東京チーム最後の追い込みです。赤いツナギは、今回新たな伝説となった、高校1年にして東京チームのプロジェクトマネージャー高山さん。
真ん中にりんりんさんが見えますが、今回東京チームをサポートをしているのは、りんりんさんが代表を務めるCOREのメンバー。
実は今回、残念ながらCORE自身のロケットは打ち上げることができなかったので、東京チームは何としても成功させたいという思いが伝わってきます。
日が暮れて....
朝一の秋田大打上が昼になり、順に遅れて、ロケットガール東京チームの打上が閉会式直前になったため、東京チームの打上を待たずに、閉会式と会場の後片付けが行われてしまいました。
しかし、テントも座席もない中、わずかな観客が、東京チームの打ち上げを最後まで見とどけようと待っています。
そこへ「本部のメンバーは懇親会に移動します」との連絡が入ります。
「まだ観客が残っているのにどうするんですか」ここで司会の中山さんが決断します。「わかりました。私が本部を引き受けます!」
かくして、たった一人の本部である彼女のおかげで、観客へのアナウンスは続けられたのでした。
盛り上がりは続き、そして..
しかし、夕暮れの迫る中、会場の使用期限の19:00に向けて、盛り上がりはそれだけではありませんでした。
まず、18:40頃の打ち上げで、酸化剤N20が充填されないことがわかりました。もし、東海大の最初の時と同様、ボンベの圧力の問題だとすれば、もう交換している時間はありません。高山プロマネの「打ち上げを中止します」という苦渋のアナウンスが流れます。
その時、男性の「ちょっと待ってくれ、ボンベのバルブが閉まっているだけかもしれない」という声が。結局その通りで、打ち上げは18:50頃再開されます。
ところが、もう暗くなっていて、N20が充填されたかどうかが確認できない。1分ほどの沈黙が流れます。そこへ今度は女性の声で「N20出てるよ!」
この後は映像でごらんください。夕闇を突いて飛ぶロケット、のしろケットちゃんも無事放出され、能代宇宙イベントのフィナーレを感動で飾りました。
あとがきにかえて
今回は、本来客観的であるべき対象に対して、ほんの少しではありますが、かかわってしまったために、全くの第三者から見て面白い記事になっているかどうか、自分でもわかりません。
もっと書かなければいけないことや、逆にもっと削るべきだった所もあるような気がします。
もし、この記事を見て「いつもの目篭と違うな」と思われたら、それはまあ、そういうことですので。
ちなみに、会場で秋田名物の「ババヘラ」をはじめて食べました。本当におばあさん(ババ)がヘラで盛り付けてくれるのは、当たり前といえば当たり前ですが、プチ感動です。
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コメント
写真や映像が多くて、行けなかった私には、とても良く会場の様子が伝わってきました。お疲れさまでした〜。
投稿: kayoko oshima | 2007/08/28 11:06
「ごく普通のロケット好きの女子大生」という感じなので、なぜか安心してしまいます。
って、むしろ日本の治安的には安心できない発言なのでは。。
ごく普通のロケット好きって。。(笑
投稿: さぁやん | 2007/08/31 01:42
「あの~。能代宇宙イベントではの、ロケット好きの女の子は、ごく普通に、たくさんいたんだの。」と、のしろケットちゃんが言っております。
まあ、そういう世界をそこに作ったのはどこの神様なのか、という話は置いといて(笑)
ところで、その方面には「ハイブリッドロケットは、N2Oを上向きに充填するから、構造上横向きには飛ばないので、絶対ミサイルにはならないんだ」という説明をした、という話を聞いた記憶がありますが(笑)、そういう意味では日本の治安的にもロケットは安心だよね。
笑ったら、気が晴れました。ありがとう>さぁやん
投稿: 目篭 | 2007/08/31 02:51
いやぁ、とても面白かったです。
これを読んでると昨日のことのように色んな思い出が思い出されますね。
投稿: 冨樫 | 2007/09/10 14:00
富樫さん、お久しぶりです。
コメントありがとうございます。
会場では、ずっとご一緒していましたからね。同じ視点から見ていたわけで、なつかしさもひとしおかと思います。
会場では大変お世話になりました。今後ともよろしくお願いします。
投稿: 目篭 | 2007/09/10 22:41
なんか某所でコテンパンにやられてメゲています。
本当の意味でのブログを持っていないので、ここに書くしかないのですが、たった一つだけ言いたいことは、
私は、能代・ロケガ関係の記事は計4本書いていますが、(確かに男の子の事は書いていないですが)一貫して、ロケットガール=高校生+大学生、というスタンスで書いてきたつもりで、そこはマスコミの取り上げ方とは違うと思っています。
そこだけは「違っている!」と叫びたいです。
投稿: 目篭 | 2008/01/11 01:28