桜咲くか?リアル・ロケットガール2年目の春
女子高校生がロケットを打上げることでマスコミでも有名になった秋田大学のロケットガール養成講座。昨年の夏に第二期東京チームが打上に成功していますが、秋田チームはこれまでに3度挑戦していずれもうまくいっていません。桜色のロケットは果たして春に咲くことが出来るでしょうか。
2008年3月15,16日に能代で行われた、秋田大学学生宇宙プロジェクト、兵庫県立大学、とロケットガールの打上げの様子をレポートします。女子高生だけでなく、大学生のロケットガールとロケットボーイたちの活躍もご覧下さい。
秋田大学3号機は加速度計が目玉
最初の打上は、秋田大学の3号機。加速度計をつんでいて、ロケットの飛行中の加速度データを無線で地上に送ります。
左の写真の黄色いトランシーバーがロケット側、赤い方が地上側で、通信の確認をしているところ
どうやって受信するかというと...
地上では、写真にある大きなアンテナで受けて、パソコンにデータを拾います。
右側の女性は横田さん。加速度計やアンテナなどいろいろなものを作る、秋田大学学生宇宙プロジェクト・ロケット部門の技術者です。
運転席から心配そうに様子を見ているのは、小説「ロケットガール」原作者の野尻抱介先生。野尻先生はアマチュア無線の大家でもあるのです.。
ロケット側の無線機構
先ほどのトランシーバーの回路を、実際にはどんなふうにロケットに組み込むのかと思っていたのですが、なんと、トランシーバー自身をそのままロケットに埋め込むのでした。
「そのまんまやないか!」というツッコミが入りそうですが、実際に動くものを作るためには、何も部品や回路で組む必要はないわけです。
本来やりたいことのために、回り道をする手間が省けるわけで、「現代の物作り教育の手段」と考えると、目から鱗が落ちます。
射点へ向かいます
ロケットの発射地点(射点)へクローラキャリアという重機で、ロケットを運ぶところ。
集合写真を撮り忘れていたので、秋田大3号機の全景はこれで。
そして打上げ(動画です)
残念ながら..でも加速度データは成功
3号機は打上げには成功しましたが、残念ながら開放機構が動作せず、パラシュートが開かなかったため、墜落して大破してしまいました。
でも、加速度計と、無線データ収集は成功し、墜落の直前まで、加速度データが送られてきていたそうです。
写真は回収された3号機の残骸。
兵庫県立大のコールドロケット
次は、兵庫県立大のコールドロケットエンジンを使ったロケットです。
ドライアイスにお湯をかけるとものすごい勢いで白い蒸気が出ます。コールドロケットはこの原理を使って、固体や液体がガス化する勢いでロケットを飛ばすもの。
ただしお湯をかける相手は、ドライアイスではなく、液体窒素です。
写真はその液体窒素を詰め替えているところ。
秋田大ロケットの"匠(たくみ)”
コールドロケットは、兵庫県立大がエンジンを作り、秋田大がそれ以外のロケット部分を作る、両大学の合作です。
写真は、コールドロケットの組み立てをする関さん。関さんは、目篭と一緒に「のしろケットちゃん3D化計画」をやってくれた人でもありますが、秋田大では「関が来れば何とかなる」と言われているそうで、ひょいひょいっと現場でいとも簡単に部品を作ったりする、ロケットの”匠(たくみ)”です。
今回も全部のロケットにかかわっていて、ひっぱりだこでした。
コールドロケットの集合写真
これがコールドロケット。両大学合作の成果です。
左から秋田大の斉藤さん、関さん、桜井さん。右は兵庫県立大の鈴木さんと飯間さん。
集合写真は、小さくするとわからなくなるので、クリックすると拡大するようにしました。以下、集合写真はみな同じになっています。戻る時は、閉じるのではなく、ブラウザの「戻る」ボタンで戻ってください。
コールドロケットの打ち上げ
コールドロケットは、15日、16日の2回トライしましたが、エンジンが不調で、打上げには至りませんでした。
ハイブリッドロケットは、もう何本も見てきたのでシーケンス(ものごとの起こる順序)がわかるのですが、コールドロケットは新しいものなので、成功しているのか失敗しているのか、 遠くから見ているだけではさっぱりわかりません。
ちなみに、写真でコールドロケットが載っている右側のランチャー(発射台)は秋田大チームが北海道の植松電機に遠征して製作してきたものです。詳しいレポートは秋田大学学生宇宙プロジェクト・ロケット部門のブログに。
燃焼班ご紹介
夕方近くまでかかり、上記2つで15日の打上げは終わりです。ロケットガールは16日の打上げ
順序が逆になってしまいましたが、15日は現場に早く着いてしまい、斉藤さんはじめ燃焼実験をやっていた燃焼班の方々にすっかりお世話になってしまいました。
左から、富岡さん、斉藤さん、二井さん。
二井さんは、この上で紹介したブログで情報発信をされている方です。(今回はプロマネもされていました。)いつも詳細な情報ありがとうございます。
ロケットガール登場
16日はいよいよロケットガール登場です。集合写真で紹介しましょう。(クリックすると大きくなります。)
前列左から、佐藤マキさん、木村さん、シュガーさん、後列左から、藤原綾香さん、柿ピーさん、首相さん、猿田さん。
首相さんと柿ピーさんは目篭の最初の記事からのおなじみですが、その他のメンバーは、昨年夏の第二期秋田チームから。
春から秋大生
その、首相さんと柿ピーさんですが、めでたく、この春から秋田大学の学生になることが決まっているそうです。
受験の時期にロケットとの出会いがあって、いろいろ大変だったと思いますが、それは人生にとって大切な出会いだったのかもしれません。
秋田大のロケットガールたちも、すばらしい後継者が出来て安心していることでしょう。
4度目の挑戦
今回のロケットは、秋に失敗に終わった「秋子」というロケットの最下段を再利用しています。
なので、桜色に塗った機体の下には、3回目の時の皆の書き込みが透けて見えていたりします。
打上は今度が4回目。今度こそ、の思いがつのります。
(3回目は取材に行けなかったのですが、1回目と2回目の記事はリンクを参照してください)
これが缶サット
これが、ロケットガールたちの缶サット。ロケットから分離して、くるくると羽根を回しながら降りてくるしくみです。
缶サットにはカメラも積んでいて、上空からの写真を撮影する予定です。
カメラの調子が...でも勇者登場!
ところが、この缶サットに積むカメラの動作が不安定で、シャッターを押しても動作しない事があることが直前になってわかりました。
カメラはあきらめるしかないと、悩んでいるところへ
秋田大マスターの栗谷さん(写真の男性)が、自分が使っているカメラを提供してくれました。
ロケットが失敗すれば木っ端微塵になる可能性があるのに、まさに勇気ある行動。この日のヒーローです。
開放機構は、ひもを熱で焼ききる方式
ロケットを上空で開いて、パラシュートや缶サットを放出する開放機構、ロケットガールが使っているのは、縛っているヒモを電熱線で焼ききる方式。
去年の夏にロケットガール東京チームと秋田大が成功した方式ですが、ヒモが切れた時に、全部が外れるように通して結ぶのは、なかなか手間がかる作業のようでした。
今回後ろ向きの写真しかなくてすみませんが、ヒモを結んでいるのは秋田大のえりつさん。
そして打上げ
ロケットガールたちの打上げですが、打上には成功したものの、開放機構が動作せず、墜落してしまいました。
15日の秋田大学3号機も同じヒモ方式の開放機構が動作しなかったので、「夏にはうまく行くが、冬にはうまく行かないのなら、温度のせいでうまく焼ききれないのでは?」という話も出ていました。
残念な結果に
回収されたロケットの残骸です。勇者のカメラもひしゃげてしまいました。
第二期秋田チームのメンバーには、2年生も多く、来年は受験でロケットにはかかわりにくくなるので、是非今回成功させたかっただろうと思います。
ただのブロガーの傍観者では、もとより何もしてあげられないのですが、うまい慰めの言葉も思いつかなかったのが残念でなりません。
幕間狂言
ちょっとここで気分を変えて。
ロケットガール総帥小林さんとじゃれている、すべての仕掛け元、秋田大の秋山先生です。
(先生から「この写真をブログに載せろ」と言われたので。)
小林さんは、就職で苦労されているという噂も聞きましたが、秋山先生とともに秋田大のロケットをゼロからここまで育て上げた小林さんをスカウトしないとしたら、日本の航空宇宙業界の目はまさに節穴と言えるのではないでしょうか。いや、ご本人がどのような進路を希望されているか、実は全然知らないのですが。
4号機の目玉はビデオ映像
トリを飾るのは、秋田大の4号機。目玉はビデオ映像の地上絵の送信です。
写真、機体の上側の赤い部分に下向きにカメラが装着されています。指が写っているかどうか確かめているところ。
上の映像がこんな感じに受信されるわけですね。
(手は引っ込めていますが、下の机が写っています。)
受信のテストです
これは受信のテストをしているところ。
視線の先に、カメラユニットを持って、遠くまで走っている人がいます。
このビデオ受信もそうですが、横田さんも秋田大が打ち上げる全部のロケットにかかわっている人です。
開放機構
なお、秋田大4号機と、コールドロケットが使っている開放機構は、ヒモ式ではなく、ロケットガール第一期で首相さんたちが苦労していた筑波大の開放機構をベースに、秋田大が軽くて使いやすいものに改良したものです。(写真はコールドロケットの開放機構)
4号機集合写真
左から藤原敬さん、佐々木さん、関さん、富岡さん、横田さん、二井さん、桜井さん、佐藤恭兵さん。
って、実は、関さん・横田さんと二井さん以外はお名前がわからなくて、こっそり小林さんにおしえてもらったのでした。
(写真はクリックすると大きくなります)
ここでハプニングが
「しまった、エンジン入れ忘れちゃった」
集合写真を撮り終えて、射点に運ぼうとして、軽いので気がついたとのこと。
「ロケットガールのエンジンも着けたので、着けた気になってしまっていた」とのことで、弘法も筆の誤りというより、エンジンを忘れるほど関さん忙しすぎです。
4号機は見事成功
打上時間は遅れに遅れ、サラリーマンの身としては月曜の仕事を休むわけにも行かず、残念ながら4号機の打上まで現地にいることができませんでした。
結果は、打上げ、開放機構とも大成功で、映像も無事取得できたそうです。
今回の打上での唯一の成功だったので、盛り上がりがすごかったとのこと。
映像は、秋田大学秋田大学学生宇宙プロジェクト・ロケット部門のブログから拝借した、4号機からのビデオ映像。発射の瞬間と、パラシュートが開いている様子が、みごとに写っています。
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