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2009/11/17

ジェットコースターで都市交通、他いろいろ

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 エンジンやモータを積まずに、ジェットコースターと同じ原理で動く、都市交通を研究している所があると聞いた。
 実は都市交通に限らず、広い場所がなければできない研究はみなここで行われているようだ。
 年に1回しか公開されないその研究所、東京大学生産技術研究所千葉実験所の正体とは?。

 2009.9.13に行われた、その一般公開を見学してきました。すごい研究テンコ盛りです。

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「エコライド」はなぜエコなのか

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 写真が、ジェットコースターの原理で動く都市交通「エコライド」です。

 ジェットコースタの原理、というのはつまり、最初に高いところへ持ち上げておいて、後は自分の重さで坂を下りていくだけ、ということです。
 こうすると、車体にはエンジンやモータなど重い機械を載せる必要がないので、今の鉄道に比べて、動かすために必要なエネルギーが少なくて済みます。
 なので、この都市交通は、エコな乗り物、「エコライド(Eco-Ride)」と名付けられているわけです。

 実験線は、写真左側の隠れている部分が一番高いところで、写真の一番手前まで下りてきます。

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 一見簡単そうですが

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 ただ坂を下りるだけだから簡単そうですが、ジェットコースターだと加速度があることが、スリルがあって面白く、また、乗るのに年齢制限などもあるので問題はありませんが、子供や高齢者が日常に乗る乗り物としては、そんな加速度があってはたまりません。

 重力の加速度を使いながら、いかに快適な乗り心地にするのかが課題だそうです。

 写真は、スタート地点から実験線を見たもの。赤丸の、車両があるところが終着点です。これだけ見るとまさにジェットコースターですね。

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 止まっているところから動かすのも大変

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 さらに問題は、ジェットコースターで途中で止める場合は、斜めに止めて、ブレーキを外すとまた坂を下りて行く、という形が多いそうですが、都市交通では、お年寄りの乗降などのバリアフリーを考えると、駅は平面上にあった方がよいので、坂になっている所まで押していく装置を駅に付けるなどが考えられています。
 たとえそのようにしても、車体が軽いので、交通全体としては使われるエネルギーは少なくてすむそうです。

 写真で、車輪の下に見えるのはブレーキですが、ブレーキも車体側ではなく線路や駅側に設置されるそうです。

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 残念ながら動いていませんでした

 今年の春頃に「エコライド」の事を知り、是非見たいと思っていたのですが、何しろ年一回しか公開がない研究所なので、この日を楽しみにしていました。

 昨年の公開では動いていたそうですが、今年は、車体を改造中で動かすことができないとの事。今ある車体は無人のものですが、新しい車体はいよいよ人間が乗って乗り心地が試せるものだそうです。
 来年春には新しい車体での実験が行われるそうですが、一般の見学はできないそうなので、秋の一般公開で見るしかありません。なお、実験の日がわかれば、外から垣根越しに見るのは問題ないそうです。

 映像は、デモ展示のパソコンの映像を手持ちビデオで映したものなので、ブレがひどくてすみません。

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 大きな実験設備がたくさん

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 都市交通の実験線も、広い土地が要りますが、どうやら、ここ千葉実験所は、広い土地や大きな設備が必要な実験を専門に行う所のようです。

 写真は、制作途中のものですが、石炭を原料にした新エネルギーを作る設備で、一番上に石炭を入れる口ができるのだそうです。
 広角レンズでゆがんでしまっていますが、後ろの建物との比較で大きさがわかるでしょうか。

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 大きいものと言えば巨大水槽

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 私のような特撮ファンは、「広い土地がいる設備」といえば、今は亡き「東宝特撮大プール」をすぐ思い出すのですが、でかい水槽もまた大変に場所を取る設備です。

 こちらは「海洋工学水槽」。ロボット潜水艦などの研究がおこなわれています

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この潜水艦の名前は「ツナサンド」 

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 写真で水中にいる黄色いロボットは、名前を「ツナサンド」と言うそうです。
 確かに四角くて何か挟んであるようには見えますが..。
 置いてあった英文の論文のタイトルにもデカデカと”TUNA-SAND”と書いてありました。

 このツナサンド、海上からケーブルで操作することも、自分で判断して動くこともできるそうです。
 ケーブルで操作する場合、流れの速い場所だとケーブルが抵抗になってうまく動かないなど、動作が制限されますが、自分で判断する自律型(AUV:Autonomous Underwater Vihicle)だと、自由な動きができるのだそうです。

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もう一つは「トライドッグ」

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 今回デモをしていたもう一つの潜水艦の方の名前は「トライドッグ」 。ホットドッグが3本あるような形をしているからでしょうか?

 「トライドッグ」は自律型専門の潜水艦で、自律型の欠点は、一旦ミッションを開始してしまうと、ミッションが終わって浮上してくるまで、データが取れないことだそうです。

 現在の科学では、水中を通じてデータを転送する手段がないため、浮上して無線通信をするしかないのが理由ですが、自分だけで解決できる力のある人が、なかなか上司に報告しないのは、まぁ、会社と同じようなものでしょうか。

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大漁旗もあります

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 「ツナサンド」と「トライドッグ」には、なんと大漁旗もあります。

 何が大漁なんだかわかりませんが、この2つの潜水艦を使って行われているのは、海底から吹き出している「熱水」の調査など。
 「熱水」が吹き出している周りに「熱水チムニー」という金属が堆積したものができ、その中に、今話題の「希少金属」が含まれているのだそうです。

 日本は無資源国だといわれていますが、日本を取り巻く海洋にはこのように豊富な資源が眠っていて、開発次第では、日本も資源産出国の仲間入りができるようになるかもしれません。そうなったらまさに「大漁」ですね。

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デモの様子です

 映像はデモの様子です。スクリーンに写っているのは、「ツナサンド」が映した「トライドッグ」の映像。今回「ツナサンド」はケーブルでつながっているので、リアルタイムで映像を見ることができます。

 「トライドッグ」は
自律航行で、デモでは、水中にある2本の棒を、超音波レーダーで認識して位置決めを行っています。超音波を指向性にしてレーダーにしているのも特徴的な技術の一つです。

 深海や長距離での自律航行では、このデモでの棒のような標識がないので、超音波レーダーで海底の地底を読み取りながら航行するのだそうです。

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地震の解析もでかい設備が

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 地震が起きたとき、建物がどうなるかを調べるため、地震と同じ揺れを建物に与える設備もあります。建物がそのまま入るんだから、これもでかいわけで。

 「五重の塔」というのは、数々の地震でも倒れたりしていないわけですが、なぜ倒れないのかは、工学的にはまだよくわかっていないそうです。

 そこで、五重塔の一部を切り取ってきて、それを揺らしてみようというのがこの実験

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五重の塔が地震です

デモの映像です。

 
※ものすごい音が出ますので、注意してください

 音は木のこすれる音だそうです。これで震度5くらいだそうです。

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こんなものも場所をとります

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建築といえば、こんなものも場所を取ります。というか、「他の人から触られない場所」を確保する必要がある、と言った方がいいでしょうか。
 これは、鉄筋コンクリートを野ざらしにして、その劣化を調べる所です。

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10年でこんなに違う

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前の写真の場所ではありませんが、もっと過酷な海岸で、10年間でどれぐらい違うかという例。
 鉄筋をエポキシ塗装したもの(写真では上3つ)とそうでないもの(下の2つ)。ものすごい違いです。

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青いのがエポキシ塗装

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 青いのがそのエポキシ塗装です。10年経たなければ結果が分からないとしたら、新製品開発なんてできないと思いますが、そこは、人工的に劣化を加速する装置や、劣化しても影響がない所に一部分使ってみたりして、少しずつ改良していくのだそうです。
 一口に工学と言っても、すべてがITのように秒進分歩というわけではなさそうです。

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こんな「建築」も

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 建築つながりでは、こんなものもありました。

 「ミニ・ライノ」というこの建築物は、ちょうど、ウィスキーの樽(たる)のタガのように、外側に帯状に回した金具だけで支えられています。
 このため構造がとても簡単になる、という事ですが、樽(たる)だと、円形にしかできないところを、写真右側のように、へこんだ形にもできる事が技術なんだそうです。

 「ミニ・ライノ」はかわいらしい小屋のようですが、これのでかい版の「ホワイトライノ」というのも同じ実験所の中にあり、こちらはホールくらいの大きさで、やはり場所を食います。

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青点滅信号の実験

新しい信号機の表示を実験しようと思ったら、街中ではできません。 そんなことをしたら大混乱になります。ちゃんと道路があって、しかも信号機は新しい規則で動いている、そんな場所はやはりここしかないようです。

 動画は「青点滅信号」。右折左折可能をするための表示を、矢印ではなく、青の点滅で行うというものです。青点滅の間、後ろ側(動画では手前の裏向き)の信号は赤になっています。カナダではすでにこの表示が実用化されているとか。

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セグウェイみたいなものも

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 私有地内に道路があって、道路交通法に影響されずに乗れる、という話で思い出すのはかのセグウェイですが、こちらでも似たような乗り物の実験が行われています。
   やはり、公道を走るようになれるのはかなり先の事で、まずは、敷地内などの限られた範囲で実績を積み重ねていくしかないとの事で、実際に、セントレアで警備員の移動に使われているそうです。

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セグウェイとの違い

 セグウェイとの違いは、ハンドルがなく、体重の移動だけで制御できること、セグウェイは下が平らな板ですが、こちらは体重の移動にともなって変形する、などだそうです。動画をごらんください。

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車両のモックアップも

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 セグウェイみたいな乗り物の隣には、こんな設備も。
 快適な車両にするためには、どのような座席配置が良いのかを研究したモックアップです。実際に東急池上線と多摩川線の新車両に研究成果が使われたとのこと。

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地中熱利用空調システム

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 こんな研究も、ちょっと街中ではできません。たとえば夏に井戸水が冷たいのでわかるように、地中の方が温度差が少なくいので、夏は涼しく、冬はあたたかい。それを利用して、空調をしようという研究です。すでにいくつかの建物で実用化されているらしいです。

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すごいパイプの数

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 地中に、温かい水を送り込んで、冷えて戻ってくるとか、あるいは冷たい水を押し込んで暖かくして帰ってくるとか、というためにたくさんのパイプが地中にさしてあります。

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紙で作る射出成型

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 場所が必要な研究以外に、エコ関係も重要なテーマなようで、いろいろな研究がありました。写真は一見、プラスチックのようですが、全部紙パルプをプラスチックのように射出成型してつくられたものです。紙ですから、自然に還るわけですね。

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廃物からバイオエタノール

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 とうもろこしなどの作物から作る燃料、バイオエタノールは、ガソリンなどの代替手段として脚光を浴びましたが、本来食料に回るべき作物がエネルギーに回ったため、食糧不足が起こって、大問題になりました。
 そこで、ここでは、作物の中でも、捨ててしまう所、イネの藁(イナワラ)とかリンゴの木を剪定した不要な枝、モミガラなどからバイオエタノールが作れないかという研究をしています。
 もともと捨てる部分には、バイオエタノールの原料になるセルロースが30%くらいしか含まれておらず、コストが高いのが難点とのこと。

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おいしそうな焼酎の匂い

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 ところで、バイオといっても「エタノール」ですから、つまりアルコールなわけです。
 「コストが高い」というお話だったので、『研究としてはともかく、ビジネスとしては、燃料ではなく、「焼酎」として売ったらどうですか』と提案してみたのですが、あまり真剣には取り合ってもらえませんでした。
 ただし、基本的に出来上がったものが焼酎と同じなのは間違いないようで、写真にあるイナワラ由来のものの匂いをかがせてもらいましたが、おいしそうな焼酎の吟醸香がしました。

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半導体の廃物から、太陽電池

Dopant

 廃物と言えば、コンピュータのメモリなどの半導体の原料のシリコンは、作るときに削りカスなどで半分くらいが廃物に なるそうです。
 半導体の純度は99.99999999999%くらいだそうですが、太陽電池の純度は99.99%くらいでいいそうなので、この半導体の廃物を利用して太陽電池を作ると、シリコンの精錬などに使うエネルギーがずいぶん節約できるそうです。
 写真は、その半導体の廃物を電子ビームで溶かして、太陽電池用にする装置。

 この話で気に入ったのは、半導体に入れる人工的な不純物の事を「ドーパント」と言うそうなのですが、実は「ドーパント」というのは「仮面ライダーW」に出てくる悪役の名前です。
 そうか、『人工的に作られた(社会の)不純物』という意味だったのか、とすごく納得したのですが、お話を伺った東大の先生は、まさか「仮面ライダーW」の話を聞かれているとは夢にも思わなかったに違いありません。

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実は東大第二工学部の跡地

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 実はこの東大生産技術研究所というのは、東大第二工学部を引き継いで設立されたものであり、千葉実験所は第二工学部の跡地そのものだという事を知りました。

 第二工学部、と言っても、東大に夜間コースがあったわけではなく、東大工学部そのものが二つに分かれたもので、Wikipediaによれば、第一、第二の両工学部は、学科構成も同じで、学生の成績も均等になるように振り分けられていたそうです。

 私自身は、東大とは縁もゆかりもありませんが、以前勤めていた会社の、当時の社長が第二工学部出身だったことから、その存在くらいは知っていました。

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そして宇宙

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 そして、何を隠そう、現在のJAXA ISAS(宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究本部)の前身である東大宇宙航空研究所そのものが、ここ生産技術研究所から分かれてできたものでした。
 なので今でも、生産技術研究所は「宇宙以外」の研究をしているそうです。
 日本の宇宙工学の父、糸川英夫先生も、元は東大第二工学部の教授だったのです。

 今回、一般公開を見学して感じたのは、確かにすごい設備とはいいながらも、JAXAの種子島、筑波などの宇宙センターや、日本原子力研究開発機構のJ-PARCなどの巨大施設を見慣れた目には、意外にこじんまりしたものに思えたことです。

 これが、「日本の大学の予算は、まず東大が取り、その残りを他の大学で分ける」と言われた東大の研究設備かと思うと、少し物足りないように感じました。

 個人的にはむしろ、東大にはもっともっと予算をつけてもらい、JAXAでやっている学術研究なんかはもう一度そっくり東大にお持ち帰り願って、JAXAには、早く安く、一般市民みんなが宇宙旅行に行けるための宇宙船開発に全力で専念してもらいたいものだと思います。
(そうでないと、来月には民間宇宙船が完成するアメリカとの差が開く一方で....。)

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コメント

浦@日本の自律型海中ロボットの父です
素晴らしい。写真とコメントに感動しました。
浦研のロボットには、他にも
タムエッグ:Tam-Egg
イクラ:ikura
ツインバーガー:Twin-Burger
アールツーディーフォー:r2D4
など、世界の第一線で活躍する覚えやすい名前のロボット達がいます。5月の末に毎年おこなわれる駒場での生研公開をぜひ見に来てください。生研のB-D棟はとても大きく写しがいがありますよ。

投稿: 浦 環 | 2009/11/17 11:22

 わ!浦先生でいらっしゃいますか!記事書きました目篭です。

 見学させていただいた時、お名前だけは伺ったのですが、まさかご本人からコメントをいただけるとは、夢にも思いませんでした。

 いろいろな研究所を取材していますが、先生ご自身にコメントいただいたのはたぶん初めてです。ありがとうございます!

 ロクにメモも取らずに書いたので、記述がいい加減ではないかとヒヤヒヤものですが、おほめいただいて大変感激しております。

 本当にすばらしいネーミングの海中ロボットたちで、先生の愛情の深さがわかります。

 来年の5月末ですね。是非お伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

投稿: 目篭 | 2009/11/17 21:36

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