ついに完成!!民間観光宇宙船 アメリカ・モハベ空港、発表会潜入レポート
アメリカで、観光用の民間宇宙船がついに完成し、12月7日に、カリフォルニア州モハベ空港でお披露目がありました。
実際にその宇宙船で行く観光旅行に申し込んでいる人しか行けない筈のお披露目に、なぜか目篭が潜入。現地からのレポートをお送りします。
誰もが知っているあの超有名人も、なぜか登場します。
※ 宇宙港・スペースポートアメリカ完成の記事は→「これが民間宇宙旅行専用の宇宙港だ!」ですよ。この記事ではありません。
「宇宙空港」でGoogle検索されると、なぜか当記事が検索されて困っているのですが、SpaceShipTWOが発着するのは、モハベ空港ではなく、リンク先の宇宙港・スペースポートアメリカです。
そもそも、「空港」は飛行機の発着するところですから、宇宙機の発着するところは「宇宙空港」ではなく「宇宙港」です。
あと、どうしてこの記事で検索をやめますか?宇宙港について調べるなら、上記のリンクに行ってください。いくらコメントを追加しても、上記リンクに飛んでいかない人が多いのは、もう、私には信じられない。当記事はSpaceShipTWOの機体が完成した時の事を書いた記事であって、宇宙港に関しては触れていません。 お間違えなく。
更に、モハベ空港とその周辺にある民間宇宙開発企業に関しては、「アメリカ民間宇宙開発最新事情 2008STSJツアー報告(その1)」に詳しく書いていますので、その事に興味のある方は、是非そちらをご参照ください。
(2013.09.11追記)
特別のパス
民間宇宙船のお披露目イベントに出席できるのは、その宇宙船で行く観光旅行に申し込んでいる人と、その人の同伴者(奥さんなど)です。
写真は、宇宙に行く人専用のパス。今回お披露目になる宇宙船SpaceShipTwoの形をしたアクセサリがついています。同伴者はこのアクセサリがありません。
※名前部分は個人情報のため、画像処理してあります。
砂漠に巨大なモニュメントが
お披露目は、アメリカ・カリフォルニア州モハベ砂漠にある、モハベ空港で行われましたが、会場では砂漠のまん中に巨大なモニュメントが並んでいます。
前項の写真の専用パスも、よく見ると同じ記号が並んでいるのがわかります。
トップの写真でみんなが着ているジャンパーの背中も、光って十字架みたいに見えていますが、実はこの記号が縦に並んでいるわけで、この記号は今回のイベントのシンボルになっています。
イカロスとライト兄弟、に始まる航空宇宙の歴史を表していて、終わりの方は、アポロ宇宙船、SpaceShip One、そして最後が今回お披露目のSpaceShipTwoになっています。
Space Ship Oneとは
会場には、Space Ship One(スペースシップワン)も展示されていました。
Space Ship Oneは、民間が作った初めての宇宙船で、2004年に宇宙に行きました。
今回完成したSpace Ship Two(スペースシップツー)は、このSpace Ship Oneを、観光客が乗れるように改造したものです。
発表会場です
会場には、仮設のエアドームが2つと、完成記念イベント用仮設テントがあります。
切れていますが、写真左側がイベント用の仮設テント。
テントの中です
仮設テントの中には完成記念イベント用のステージなどがあります。
上と横はビニール貼りだったのですが、発表時はカリフォルニアには珍しいすごい雨と風でビニールが波打っていました。
でも、かなり良い材質のものだったと見えて、全く雨が中に降り込んだりすることはありませんでした。
ドームの中は
ドームの中はこんな感じで、ちょっと近未来的。発表前のパーティで使われます。
パーティは記念写真大会
パーティは、お酒を飲んでおしゃべり、というより、もうとにかく記念写真大会でした。
特に、宇宙旅行を主催していて今回の宇宙船を作った、このイベントの主催元、バージンギャラクティック社の、リチャード・ブランソン会長は大人気。
なんでこんなに記念写真を撮りたがるのか、その時はよくわからなかったのですが、後で考えたら、「宇宙観光客」というのは「観光客の代表」、つまり「典型的な観光客」なわけで、そんな人たちを集めたわけですから、そりゃみんな写真撮りまくるわけです。
宇宙に行く人たち(その1)
で、記念写真です。
せっかくなので、この機会に、日本から宇宙に行く方を順にご紹介しましょう。
右から、ブランソン会長の左が、甲村さん。
実は甲村さんのおかげで、私はこのイベントに来ることができたのです。奥様が行かれないということで、かねてからこのイベントに来たいと言っていた私を、甲村さんが同伴者にしてくださったのでした。
その左隣りが稲波紀明さん。
稲波さんは「ファウンダー」といって、最初に宇宙に行く100人の中の一人です。さらに、日本でバージンの宇宙旅行をさかんと宣伝しているんからでしょうか、このイベントの前に、カリブ海にある、ブランソン会長の別荘に招待されていたそうです。招待客は28人いて、日本人は稲波さんだけだったとのこと。
いちばん左は宇宙に行く人ではなく、私と同様の手を使って潜り込んだ(^^)/岡本さんです。
宇宙に行く人たち(その2)
右側は、ライブドアの社長などを歴任され、現在は小僧.comの代表取締役の平松庚三さん。平松さんも最初に宇宙に行くファウンダーの一人です。
左側もSpaceShipTwoで宇宙に行かれる方で、佐光さん。
宇宙に行く人たち(その3)
左側は、やはりSpaceShipTwoで宇宙に行かれる山本さんですが、右はバージンギャラクティックのライバル、XCOR社の社長、ジェフ・グリーソン。
XCOR社は、このブログの別の記事でも紹介しましたが、バージンの半額で、地上60kmでの地球観光と無重力体験ができるロケット機を開発しています。
みんなをつれて行ってくれるのは...
みんなを宇宙に連れて行ってくれるのは、もちろんバージンギャラクティックですが、その日本総代理店で、日本から宇宙に行く人がお世話になるのが、旅行会社クラブツーリズムのこのお二方。左が笠野さん、右が浅川さん。
日本の旅行会社全体でも、宇宙旅行の担当者は、数人しかいません。
ちなみに気になるお値段ですが、バージンギャラクティックに20万ドル。現在の為替レートだと1800万円以下になるでしょうか。これと、クラブツーリズムへの手数料が日本円で前記の1%(1800万円なら18万円)です。
現時点での、日本からの旅行者をまとめておきますと
・ファウンダー(宇宙に行く最初の100人)
平松さん、稲波さん、他1名 計3名
・クラブツーリズムの貸切フライト(1機目)
甲村さん、山本さん、佐光さん、他3名 計6名
平松さんも、クラブツーリズムが総代理店契約をする前に直接バージンに申し込んだのでクラブツーリズム扱いではありませんが、もう一人、オーストラリア在住の日本人の方が現地の総代理店で申し込まれています。
つまり、宇宙旅行に行く日本人は現時点で合計10人、ということになります。
クラブツーリズムでは、貸切フライト2機目で行く人の募集も、もう始めているそうです。
そして完成記念イベント
完成記念イベント自身は、日本でよくある何かの製品の完成記念式典と同じようなものです。ブランソン会長の挨拶など、関係した人々のスピーチがあります。
写真は機体を制作したバート・ルータン(右から2番目)とそのチーム。技術者が一人ずつ紹介されていました。
ちなみに、ゲストが登場するたびにみんなが総立ちになってステージが見えなくなるので、最初はスタンディングオベーション(演劇などで、観客が立つことで賛辞を表現する)か何かだと思っていたら、実は、みんなが一斉に写真を撮ろうとしているのでした。(^^)/
シュワちゃん登場
そして、これまた日本の式典でよくあるように、知事のスピーチがあります。ところでモハベ空港はカリフォルニア州にあるので、と、いうことは、ひょっとして知事って?
そう、アーノルド・シュワルツネッガー知事の挨拶があったのです。
もともと、SpaceShipOneはここモハベ空港から飛んだのですが、SpaceShipTwoが発進する宇宙港は、現在ニューメキシコ州で建設中のSpacePortAmericaになります。
シュワ知事は、それがカリフォルニア州でないことが残念だ、という話をジョークを交えながらしていたようでした。
対するニューメキシコ州知事は
対するニューメキシコ州知事のスピーチは、(ここは英語に堪能な方に後で訳していただいたのですが)「そんなことより、ニューメキシコ州が舞台の映画を、カリフォルニア州のハリウッドのセットの中で作っちゃうのがいっぱいあって、その方がずっと問題だ」と、映画をネタにしたジョークでやり返した、んだそうです。
ただし、最後はどちらも「結局はアメリカの発展になることだから」とお互いを認め合う発言をしていたとのことです。
お披露目が始まります
夜もとっぷりと暮れ、ついに、SpaceShipTwo完成機体のお披露目が始まりました。
最初にご紹介した、巨大モニュメントの横を、SpaceShipTwoがやってきます。
映像をごらんください(音も出ます)。
撮影にいい位置が確保できなかったので、最後横が切れてしまっていますが、すみません。
これが観光宇宙船SpaceShipTwo
そして、これが今回完成した、世界最初の民間観光宇宙船、SpaceShipTwoです。
....が、とにかく、記念写真好きの方々ばかりで、かわるがわる機体をバックに記念写真を取るもので、なかなか全景の撮影ができません。(貴重な全景はこの記事冒頭の写真をごらんください)
まん中がSpaceShipTwo
3つ同じような機体がくっついているように見えますが、実は、まん中が宇宙に行く船、SpaceShipTwoです。
両側はWhiteKnightTwo(ホワイトナイトツー)といって、SpaceShipTwoを15kmの高さまで運ぶジェット機です。高度15Kmで、まん中のSpaceShipTwoを空中発射します。
スヌーピーに似ている
で、SpaceShipTwoですが、前から見ると、スヌーピーに見えて仕方がありません。
ひょっとしたら、デザインやカラーリングを意識してやっているんでしょうか。
SpaceShipTowの全景
だいたいこの写真のあたりがSpaceShipTwoです。(この角度だとそれほどスヌーピー感はないですね。)
SpaceShipTwoの乗客は6名。乗員は2名です。一度に宇宙に行けるのは6人ですが、飛行機と同じように、繰り返し何度も飛ぶ、宇宙観光船です。
SpaceShipTwo(後ろから)
SpaceShipTwoを後ろから見たところです。エンジンには赤いフタがしてあって、それがフラッシュに反射して赤く光るので、これまた記念撮影する人たちに好評で、人波が途切れるのを待つのが大変でした。
エンジンはハイブリッドロケットエンジンという、プラスチックを燃焼させるもので、爆発物ではないため、通常のロケットエンジンより安全性が高いものです。
全体を後ろから
WhiteKnightTwoを含めた後ろからの全景です。前からみてもそうでしたが、かなり大きなものです。現在はよく知りませんが、WhiteKnightTwoが出来たときには「全部が複合材料でできた機体としては世界最大」と言っていました。
運搬車で引きます
SpaceShipTwoのエンジンはフタがしてありますが、確かではありませんが、姿を表した時はWhiteKnightTwoの方のエンジンを使っていたような気もします。
しかし、少なくとも最後は、牽引車で引っ張って退場しました。これがその牽引車。
こんな風に棒を接続します
こんな風に車輪と牽引車の棒を取り付けています。
お披露目は終わりです。
これでお披露目は終わりです。牽引車に引かれて、静かに退場します。
(動画でどうぞ。音が出ます)
これからSpaceShipTwoは検査(おもに飛行テスト)の段階に入ります。
バージンギャラクティックはテストに1年半くらいかかるだろう、と言っているそうですが、以前の私の記事でモハベの管制官に聞いた時には、テストにはもっと時間がかかるんじゃないか、と言っていました。
しかし、機体が完成したことで、早ければ2011年、最も遅い予測でも2013年開始と、民間宇宙旅行は本当に目前に迫ってきました。
さてこうなると、問題は日本です。JAXAは「観光用宇宙船はやらない」とか「やったとしても旅行に行けるのは30年後」だとかいっていますが(この記事を参照してください)、現にこうしてたくさんの日本人宇宙旅行客がいるわけで、その人たちは、みんなアメリカの宇宙船で、近々宇宙に行くわけです。
JAXAでも三菱重工でもIHIでもいいですが、今、観光宇宙船開発をやらないと、将来、宇宙観光がさかんになった時に、パソコンのCPUとOSみたいに、また、「大事なところはみんなアメリカ製」ということになってしまいます。 是非関係各方面の再考をお願いしたい所です。
※この記事の続編とも言える、「スペースポート・アメリカ」完成披露の記事
を書きました。この記事から2年後の最新情報です。是非上のリンクをクリックしてお読みください。(2011.10.19)
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コメント
スペースシップ2のエンジンは地上では使えません
理由はハイブリットエンジンって言うものなのですが
・地上を走行するには出力が大きすぎます
・一度燃焼すると燃料がなくなるまで止められません
などの理由があります
これでは使えませんね(^^;;
・上の理由に入れないのですが確かノズルは見えますがエンジン自体は積んでなかったんじゃないのかと思います
(燃焼実験が済んだばっかりとの事)
・同じく上の理由に入れないのですが周りに人がたくさんいる中でロケットエンジンに火を入れるのは危険なんですよね
投稿: はいてんしょん | 2009/12/12 20:41
はいてんしょんさん
コメントありがとうございます。
上記はすべて了解しておりまして、多分私もエンジンは積んでいなかったろうと思っていますが、ウラが取れていないので単に「フタがしてある」という記述にしました。
私もさすがにハイブリッドロケットを地上でふかすと思っているわけではなくて、(原文は一切変えていないので、もう一度お読みいただきたいですが)気にしていたのは、登場の時に、「後ろから牽引車で押していた」のか「WhiteKnightTwoのエンジンを使っていた」のか」というところです。
少なくとも前方には牽引車が見えなかったことと、WhiteKnightTwoのエンジンのファンは少なくとも回ってはいたので多分WhiteKnightTwoのエンジンのような気がしますが、これもウラが取れていなかったので記事のような表現にしてあるわけです。
「SpaceShipTwoのエンジンを使っていないのは当たり前だが、WhiteKnightTwoのエンジンは使っていたかもしれません」みたいな記述にすればよかったんでしょうかねぇ。
そうすると「なぜ当たり前なのか」をかかなくっちゃいけなくなるわけで、まあ、その理由は,はいてんしょんさんのコメントをご参照ください。Thanks for your cooperation.!
投稿: 目篭 | 2009/12/12 21:05
宇宙好きで謙さんに連れてもらって行っている方ですから
知っているだろうな~と思いながら
コメント書きました(^^;;;
投稿: はいてんしょん | 2009/12/16 00:24