種子島宇宙検定ツアーにようこそ!
種子島で、第一回の「種子島宇宙検定」が実施された。
JAXA(宇宙航空研究開発機構)も協力して行われた検定試験なのだが、なにしろ主催が「種子島観光協会」だ。
試験とセットになったバスツアーがあって、他では見ることができない種子島宇宙センター内のいろいろな設備を見ることができ、仮に試験に受からなくても、このツアーだけでも行く価値がある。
更に、成績優秀者には、なんとロケット打上見学に招待されるという特典つき。
まさに 「種子島・宇宙検定ツアーにようこそ!」というわけです。詳細は記事をどうぞ。
文末に私なりの「傾向と対策」の分析と「勉強法」も書いておきました。
※写真は試験場で用紙を数えている種子島観光協会の方
3時間超のバスツアー
種子島宇宙検定を受検する人は、バスツアーに参加することができます。ツアーでの説明の中からも出題されるので、ほとんどの人が参加します。
種子島宇宙センターでは、普段でもバスツアーを行っていますが、それは約1時間半。宇宙検定のバスツアーは、3時間の予定を更に40分もオーバーするというもので、当然普段見学できないポイントもたくさん含まれています。
ロケット好きにとっては、たとえ試験に合格しなくても、このツアーに参加するだけで価値があるというものです。
ロケットの第一射点です
バスはまず、大型ロケット発射場の第一射点(ロケットを発射する場所)に向かいます。
第一射点はH-IIAロケットを発射する射点です。写真で2つ高くそびえているのは避雷塔で、ロケットに雷が落ちないようにするものです。打ち上げの時にロケットはこの避雷塔の間にセットされるわけです。
さて、二つの避雷塔の間、ちょうどロケットの真下になるところですが(マウスオンで場所が出ます)、ここには何があるのでしょうか?。第一射点はバスからの見学でしたが、第二射点では、この部分をバスから降りて見学します。
ロケットの真下には
射点のど真ん中、つまりロケットの真下には、写真のようなノズルがあって、水を放出します。これは発射時の大量な熱と音を吸収するためのものです。
ロケット発射の映像を見ていると、発射時に大量の煙が出ているように見えますが、その多くはここで放出された水が水蒸気になったものです。
ど真ん中を見学できる
第二射点では、この放水ノズルのある、ロケットの真下に当たる部分の見学ができました。第二射点は、HⅡBロケットという、国際宇宙ステーションに物資を運ぶための日本最大のロケットを発射する射点です。
第二射点の裏側へ
ツアーはさらに、第二射点の裏側に回り込みます。この深い穴は「フレームデフレクター」といって、打上時にロケットから噴出される燃焼ガスを海側に逃がすためのものです。
真ん中に見えるバスとの対比で、その大きさがわかるでしょうか。
穴の上に大きな板がありますが、HⅡBの最初の打上では、予想を上回る威力のため、この板が曲がってしまったのだそうです。
なお、写真が曲がっているのは撮り方が悪かったためで、今は曲がっているわけではありません。今回広角を持っていかなかったのが最大の失敗で、写真がうまく撮れていません。すみません。
しっかり迫ります
ツアーは、その穴の間際までしっかり迫れます。ロケット好きだけではなく、ダム好きの方にも良いかもしれません。
第二射点(裏側から)
せっかくなので、裏側からになりますが、第二射点の写真を。(広角がないので、表からは入りきらなかったんです)
発射場の真ん中にバスが停まる
ツアーバスは大型ロケット発射場のど真ん中に停まっています。後ろに見えるのは、大型ロケット組立棟(VAB)高さ81mで、ついている扉はギネスにも登録されている世界最大の引き戸です。
ロケットは発射のおよそ半日前に、VABから射点に移動します。バスはちょうどその通り道に停まっているわけで、中継でなどでこの場所を見慣れている身には、自分がまさにその場所にいる事にけっこうドキドキします。
VABと発射管制棟の間で
次に、少し移動して、そのVABと大型ロケット発射管制棟の間で説明を聞きます。
左がVAB、右が発射管制棟。HⅡA、HⅡBの発射管制室はこの地下12mにあります。
中型ロケット発射場
ツアーは次に中型ロケット発射場に向かいます。中型ロケット発射場はN-Ⅰ、N-Ⅱ、H-Ⅰ、J-Ⅰロケットの打ち上げに使われていましたが、現在では使われていません。
こちらも通常の見学コースでは行けない所です。
手前に積んである瓦礫は、中型ロケット発射場のものではなく、大型ロケット発射場第一射点にあったPST(大型ロケット発射塔)の残骸です。
PSTとは何か
それではそのPST(大型ロケット発射塔)とは何かというと、主にH-Ⅱロケット打上時に使われていた発射塔です。H-ⅡA、H-ⅡBロケットでは、移動発射台ごとVABから射点に移動してきますので、現在では不要となり、2011年1月中旬に解体を終えました。
写真は2008年に撮影した第一射点で、2本の避雷塔の間に立っているのがPSTです。
冒頭の第一射点の写真と比べてみてください。(広角があると、こんなにきれいに撮れるんですよね。残念)
中型ロケット発射管制棟
さて、写真のこんもりした山、これが実は中型ロケットの発射管制棟です。何か起こった時にも安全なようにコンクリートと土でおおわれています。
入口の方へ回ってみると..
当時は、ロケットに何か不具合があると人が行って対応することが考えられたので、このように管制棟を近くに作る必要があったのですが、現在では、ロケットも巨大化していて、仮に何かあったとしても人間が行くと危ないので、今後の管制塔はもっと遠くに、広い面積で作ることが考えられているそうです。
HⅡロケット7号機
ツアーは次に、H-Ⅱロケット7号機の実物が保存されている大崎第一事務所を訪れます。
ここと次の総合指令棟は、種子島宇宙センターで毎日行われているバスツアーでも見学できますが、「種子島宇宙検定ツアー」で初めて種子島を訪れた人のために、コースに加えているとのこと。
H-Ⅱ7号機は、先に打ち上げた8号機が失敗したので打上中止となり、以降は現在のH-ⅡAロケットが使われるようになったため、実物が残ったもので、国立科学博物館の「重要科学技術史資料」に認定されています。
総合司令棟(RCC)
で、こちらが総合指令棟の内部。打上の中継などでおなじみの施設で、種子島宇宙センター全体の指揮を取るところです。
小型ロケット発射場
ツアーで次に訪れたのは、竹崎にある小型ロケット発射場。この発射場も現在は使われていません。
写真の発射台の赤いアームの下にロケットを吊り下げる形で、アームが上を向いて打上を行います。
この発射台に書いてあるNASDA(宇宙開発事業団)がもともと種子島宇宙センターを持っていたのですが、2003年に他の2つの組織(ISAS,NAL)と統合されて、現在のJAXAになりました。
最後の目玉、J-Iロケット
さて、ツアーもいよいよ最後。実機が保存されているのはH-Ⅱだけではありません。中型ロケット発射場の所でちょっと出てきたJ-Iロケット。
この2号機も実機が保存されていて、これが普段は見ることができない今回のツアーの目玉です。
J-Iロケットの「J」は「ジョイント」のJだそうで、NASDAのH-Ⅱの固体ロケットブースターとISAS(宇宙科学研究所)M-3SⅡロケットの上段部を組み合わせて開発を効率化したロケットだそうですが、残念ながら衛星の重さあたりにかかる費用が高いというクレームがついて、プロジェクトが凍結されてしまい、1号機だけが打ち上げられたとの事です。
写真に写っているのは、その2号機のノーズフェアリング、2段モーターケース、2・3段継手などです。
いよいよ試験会場へ
ツアーが終わっていよいよ試験会場へ。試験会場は「竹崎展望台」と言って、打上の時に、プレスの人たちが取材や撮影をするところです。
ここも、普段は一般の人が入れない所なので、そこに行けるだけでも、試験を受けた甲斐があるというものです。
なお、試験の時点では竹崎展望台の屋上は工事中で、写真は2008年に撮影したものです。
記念撮影をする人も
そして、試験場は記者会見をする部屋でした。なので、試験開始前に交代々々に記念撮影をしているたちもいました。
で、結果は?
おかげさまで、無事合格しました。(スキャナで取ったのでヘンなモアレ縞が入ってしまいましたが、本物ですよ。)
ちなみに、成績上位者として、H2Bロケット3号機打ち上げ見学にも招待されました。見学記事はこちら。
試験の傾向と対策
せっかくなので、私なりに分析した試験の傾向と対策を書いておきます。
ただし、あくまで、一受験者が勝手に分析したものですので、一切の責任は負いかねます。単なる参考ということで。
教材は、種子島宇宙検定の練習問題集とその回答&解説、JAXAからのテキスト「種子島宇宙センターとロケット打上げの概要」そして、JAXAクラブにある「JAXA宇宙検定」の問題と回答です。いずれもJAXAクラブからダウンロードまたは参照できます。
で、今回の出題の傾向です。
問題の内容 | 問題数 |
練習問題集または JAXAクラブ宇宙検定 そのまま |
51 |
上記をヒネった問題 | 11 |
ツアー説明から | 5 |
テキストから | 3 |
計 | 70 |
70問中50問正解すれば合格ですが、練習問題集と、JAXAクラブ「JAXA宇宙検定」の問題そのままが(数え間違えていなければ)51問出ています。
したがって、この2つをしっかり覚えていれば検定には合格できるはずです。
とはいっても、ケアレスミスもありますので、次の対策。
「ヒネった問題」というのはたとえば、問題集が「次のうち間違っているものは?」だったとすると、試験では「つぎのうち正しいものは?」になっているというような、質問や、回答の解説中などに出てきたものが形を問題になっているようなものです。
なかなか大変ですが、解説や質問文までよく目を通していれば、その範囲からの出題ではあります。
ツアー説明からの問題は、説明をしっかり聞いておくしかないですが、私は当日のツアーだったのですが、できれば前日のツアーに参加し、録音録画はOKですので全部録音しておいて前の日の夜に聞いて覚えるとかでしょうか。
私の勉強法
テキストからの問題については、なかなか丸暗記しづらいテキストですが、N-Ⅰ,N-Ⅱ,H-Ⅰ、H-Ⅱ、H-ⅡAそれぞれの「打上げ実績」の表を切り貼りするとA43枚くらいになります。(写真)
これもなかなか丸覚えはできませんでしたが、覚えようと努力することで、印象に残るものがあります。
結果として、今回、問題集にないテキストの問題はすべてこの表の中からの出題でした。
ただしこれは「ヤマが当たった」というべきもので、次回もそうかどうかはわかりません。
その他、私の勉強法を参考までに書いておきます。
・まずテキストを読み、問題集を一度解きます。テキストに対応しているのは前半の100問ですので、この時点ではそこまででよいでしょう。
・次にJAXAクラブ「JAXA宇宙検定」の「練習問題」を全部解きます。Webで自動採点してくれますので、それぞれ全問正解になるまでやり、答えのハードコピーを取っておきます。これには1週間くらいかかりました。
・さらにJAXAクラブ「JAXA宇宙検定」の「検定問題」も同様に全問正解になるまで全部やります。同じ「初級」が何種類もありますが、これも全種類やります。(見間違いでなければ)「検定問題」にしかない問題からも1問出ていましたので。
・次にもう一度「練習問題集」をやります。後半はJAXA宇宙検定からの問題ですので、今度は全問回答するようにします。
・そうすると自分の弱点がわかってきますので、そこを中心に覚えるようにします。
私は「宇宙飛行士」に関する問題が苦手でした。
・種子島への出発前にもう一度「練習問題集」を解き、忘れているところがないか確認します。
・行きの飛行機の中や待合室では、ひたすら前述の「打上げ実績」の表を見ていました。
・前の日の夜には宿泊先で「JAXA宇宙検定」のハードコピーを2時間くらい眺めなおしました。
たとえ試験に合格しなくても....
とはいえ、種子島宇宙センターは「世界一美しいロケット発射場と呼ばれています」(実はこれもテキストや問題集に書いてあります)し、繰り返しになりますが、バスツアーでは普段見学できない所もたくさん見れますので、たとえ受験勉強をしなくても、たとえ試験に合格しなくても、 宇宙やロケットが好きな人なら「種子島宇宙検定」に行く価値は十分あると思います。
「種子島・宇宙検定ツアーにようこそ!」です。
※写真は小型ロケット発射場から眺める大型ロケット発射場
| 固定リンク
コメント