« 韓国・麗水万博、3つの”推し” | トップページ | 韓国・羅老宇宙センターで見たものは »

2012/07/24

雨を突いて飛ぶ!HIIB3号機打ち上げ見学

Title2

H2b2

 HIIBロケット3号機の打ち上げ見学に招待されました。
(HIIBロケット3号機は、HTV/こうのとり3号機を打ち上げたロケットとして知られています)

 私は初めてですが、HIIBの打ち上げ自身は3回目、HIIAも合わせると24回目になるわけで、特に目新しい事があるわけではないだろうと思っていたら、意外と波乱万丈でした。
 いや、波乱万丈だったのはHIIBではなく、見学の方だったのですが。

 打ち上げや機体移動の映像も満載です。

Ten_line_11

ご招待は「種子島宇宙検定」のご褒美

Mondaisyu

 ご招待は、以前このブログでご紹介した「種子島宇宙検定」主催元種子島観光協会からの成績上位3名へのご褒美でした。

 ご招待には、往復の旅費、ホテル代、そして、一般の人が入れない射点(ロケットを打ち上げる場所)から3キロでの見学、がセットになっています。

 前述の記事の文末には、受験対策も書いていますので、3キロ地点で打ち上げ見学したいかたは、チャレンジすることをお勧めします。

Ten_line_7

 最初のイベントは機体移動

Kitaiidou1

 
 打ち上げといえば、ご招待には含まれていませんが、最初のイベントは「機体移動」です。ロケットの組み立てを行うVABという建物から、前の日に射点にロケットが移動するのです。
 VABから出てくるところなど「サンダーバード」(歳がわかるか?)みたいですごくかっこいいんです。ちなみにサンダーバード3号、当初の設定は全長60.8mだったそうで、HIIBは56.6mですから、まさにサンダーバード3号の実物をみているようなものです。

 機体移動は、打ち上げ日と違って3キロ以内立ち入り禁止の規制がないので、間近で見れますが、あまり近いと、VABから射点まで全部を見渡すことができません。

 一番のお勧めは「ロケットの丘展望所」です。

Ten_line_4

「ロケットの丘」はNHKが占拠

Nhk0

 ところが、ロケットの丘に行ってみると、広くない展望所の先の部分殆どをNHK(の国際放送だそうです)が占有しています。 写真で前の方にいる一群がそれ。

Ten_line_5

図解

Rocketoka

  図解するとこんな感じですが、特に困るのが、写真で右側に立っている照明用のポールです。これを避けて撮ろうとすると、撮れる人間は図のように3人が限度です。

Ten_line_6

では、どうやって撮ったか

Douyatte_3

 では、どうやって撮ったかというと、前の図で、1番の方は、特にビデオ撮影とかをされているように見えなかったので、お聞きすると「見ているので、邪魔にならなければいいですよ」との事だったので、1番の方の前の低い位置にサブのビデオを固定でセット。私自身は高い三脚で、1番の方の後ろから撮りました。

Ten_line_10

動画:機体移動10倍速(VAB→中型ロケット発射場後方)

 特撮オタクでもある目篭としては、機体移動はn倍速再生してこそ価値があると思っています。上の動画は10倍速なのですが、そうするとまさに特撮映画のような動きになって、感動します。

 ところで、上の動画、VABから出てくる所で一瞬スベるように見えるんですが、これはロケットを運んでいる車(ドーリー)がスピードを増したとかではありません。ロケットは一定の速さで問題なく運ばれていました。

Ten_line_11

問題はこのおっさん

Nhk1_2

 画像がスベるのは、このおっさんが間の柵にもたれて電話した所をカットしたからです。
NHK一行の中の一人なのですが、組織力にものを言わせて場所取りをして、撮影を占有するのも、日本のロケットの実力を世界に広めるためだと言われれば、確かに私たちには太刀打ちできません。だからといって、「一般人は撮らなくてもいい」という態度はどうでしょうか。
 自分もマスコミなら、他の人のカメラぐらい意識すべきではないでしょうか。
 しかも、NHKといえば、いわば国民のお金で食わしてもらっているような組織なのに。

 暮れ行く日差しの変化を背景に、VABから出るHIIBは、まさにサンダーバードのテーマでも聞きながら見たい所。そのど真ん中のいちばんいいところでこのおっさんは......。

Ten_line_12

 
妨害?はこれだけではないわけで

Oyako
 とはいえ、このような妨害行為?はNHKだけではないわけで、ちょっとわかりにくいですが、これは親子。子供がさっきのおっさんと同じ位置に走ってきたので、お父さんがあわてて連れにきたのですが、実は三脚が高いので、子供は問題にならず、お父さんが連れに来たことがアウトでした。

 
 しかし、最大のアクシデントは、前に掲げた図の1番の方が「クライマックスで立ち上がって写真を撮りはじめた」事です。
 1番の方には無理を言って前にサブカメラを置かせていただいたわけで、おそらくそれが邪魔になって立ち上がられたのだと思うので、全く文句は言えないし、むしろ気を使っていただいてありがたい限りなのですが、1番の方にはさすがに「後ろからも撮ってます」とは言えなかったので、多分ご本人は後ろにカメラがあるのをご存じなかったのだろうと思います。
 

 
 自業自得なんですが、とはいえ、動画が途中までになっているのはこれが理由です。

Ten_line
 

動画:機体移動10倍速(→射点)

 一旦機影を見失ってしまうと、暗いのでピントが合わなかったり、いろいろぐちゃぐちゃになってしまいます。マニュアルフォーカスで無限大にしておけばよかったのですが、買ったばかりのビデオで操作に自信がなかったことも敗因です。
 せっかくなので、途中切れ切れにはなりますが、後半の動画も載せておきます。

Ten_line_2

 機体移動後のHIIB3号機

Kitaiidou2_3

 それにしても、射点に着いたHIIBはライトアップされていて、とても綺麗です。「打ち上げより感動する」と言っている人もいるのがよくわかります。

Ten_line_3

サブカメラのほうは...

Kodomo

 サブカメラの方はどうなったかというと、低い位置で撮っているので子供が大敵です。途中大きく飛んでいる原因はこの子。

Ten_line_4

 
動画:機体移動10倍速(サブカメラ、VAB→射点)

 
 映像が飛んでいるだけでなく、ピントが甘いのは、左端に映りこむNHKスタッフの服にピントが合うからです。これもマニュアルフォーカスで無限大にする勇気がなかったからですが。

Ten_line_5

 いよいよ打ち上げ見学

Press

 さて、翌日はいよいよ打ち上げ見学。見学場所は竹崎観望所の屋上、マスコミが撮影を行う所です。これは以前に撮った写真ですが、屋上がヒナ段になっているのがわかるでしょうか。

Ten_line_6

偉そうな人が次々と...

Bus

 なんでも「エレベータに乗る順番」というのがあるらしく、私たちは竹崎観望所の入り口付近で待たされたのですが、バスからは、いかにも来賓という感じの、殆どが黒のスーツを着た偉そうな人たちが降りてきて、それも更に中で序列があるらしく、何回かに分けてエレベータに乗っていきました。差しさわりがあるかもしれないので、写真は一行が降りた後のバスです。

Ten_line_7

 ゲストハウスへ行け、と

Guesthouse1_2

 バスは1台ではなかったのですが、そうこうするうちに、「見学場所が変わりましたのでゲストハウスに移動してください」という指示が。 

 ゲストハウスは写真で丘の上にある施設。射点との距離はむしろほんの少し近いぐらいですが、時間がすでに10:00。打ち上げ予定時刻は11:06なので、準備にかかりたい時間です。

Ten_line_8

ゲストハウスでモメて逆戻り

Modoru

 ところが、ゲストハウスでは「入館証が竹崎観望所のものだ」と言って、入れてくれません。打ち上げ時刻は近づくし、気が気ではありません。
いろいろ連絡を取ってもらった挙句、結局竹崎観望所に戻ることに。波乱含みの展開です。

 ひょっとしたら、竹崎観望所の入り口で待っていたいかにも観光客風の我々を見て、偉そうな人の誰かが「何だあいつらは。同じ場所で見るのはけしからん」とかいったのかもしれません。気にした担当者が、一段格上のゲストハウスに移そうとしたのでしょうか。いや、これはすべて単なる私の邪推です。

写真は竹崎展望所に戻るバスの中。

Ten_line_9

マスコミ席はがら空き

Garaaki

 で、やっとあこがれの竹崎観望所屋上につきましたが、振り向いてみると、マスコミ席はガラアキです。
  NHKの夜7時のニュースを見ていると、メインの映像は、長谷展望公園という、一般の人が見学する6キロ地点の公園のものでした。聞く所によると、他の局も一般見学者の見学場所を占拠していたようです。
 H2Bの打ち上げも3回目で特に目新しい事もなくなってきたので、せめて別のアングルから撮りたいという気持ちはわからないでもないですが、だからと言って、せっかくJAXAが用意した、一般人には羨望の的であるマスコミ専用席をガラ空きにしておいて、一般の人が見学する場所で、ロケットの丘であったように強引に陣取りをするような真似はいかがなものでしょうか。
 そもそも、特にわかりやすいというのでもない限り「同じ事を別の場所から撮影する」事に何の報道的意味があるのでしょうか。ないとしたら、そこで報道の特権は行使しないでもらいたいものです。

Ten_line_10

突然の雨が...

Ame

 皆がセッティングを終えて、打ち上げを待つばかりとなった5分前ころから、急に雨が降り出しました。それもかなりの大雨です。みんな機材を守るのに必死。
 私の所は、後ろの方のカメラがあるので傘がさせず、ビニールで機材は守ったものの、全身ズブ濡れでの撮影となりました。

Ten_line_12

一番困ったことは...

Moyaru

 この雨で一番困ったことは、機材が濡れる事でも、自分が濡れる事でもなく、肝心のロケットが見えなくなったことです。写真は一番ひどい時の状況。
 これでは、打ち上げを撮影しても、光しか見えません。

Ten_line_13

H2Bロケット3号機打ち上げ

H2b1_2

 ところが幸運なことに、射点と竹崎との間の海は少し晴れてきたようで、打ち上げの瞬間、撮影だけはなんとか可能なぐらいの視界は確保できました。

 モデルロケットやハイブリッドロケットの打ち上げは何度も見ていますが、やはり本当の宇宙に行く船は感動が違います。
 ものすごいズブ濡れ状態でしたが、自分の目で、しかも特等席で打ち上げを見れたことは一生の思い出になりました。

Ten_line_14

動画:H2Bロケット3号機打ち上げ

 打ち上げは一瞬で、ご覧のように、10秒後には雨雲に突入してしまいました。
 打ち上げまでにパチパチ言っている音は、機材にぶつかる雨の音。
 すごいと思うのは、この状況で、打ち上げのGOサインを出した判断力です。
 恐らく、今までの多くの実績から、「どの状態なら大丈夫」というのがしっかり把握できているのでしょう。

 この技術力を活かして、JAXAは是非、いつかは希望する国民全員を宇宙に連れて行ってくれる宇宙開発、をしてもらいたいものだと思います。

Ten_line_15

動画:打ち上げ直前の状況(10倍速再生)

 打ち上げ直前の状況がどうだったか、10倍速にしてみました。いかに過酷な状況での打ち上げだったかがわかります。

Ten_line_16

晴れた!

Hareta

 打ち上げが終わってほどなく天気は回復し、先ほどの悪天候が信じられないきれいな青空が。
 私たちは、種子島観光協会の方が用意して下さった昼食の「サンダルウッド」というお店(写真)へ。
 「インギー鶏」という種子島名物の鶏料理で、刺身や炊き込みご飯、焼いたものや、味噌汁の出汁まで「インギー鶏ずくし」の昼食で、たいへんおいしかったです。

 そもそも、その日が悪天候なら打ち上げは延期になるわけで、打ち上げの瞬間だけが悪天候、などという今回のようなことは多分二度とないでしょう。
(個人的には、滅多にない打ち上げを体験できたと喜んでいますが)
 そんな悪天候でも、打ち上げは充分感動的でしたから、天候が良い時の打ち上げはもっと感動できるはずです。
 繰り返しになりますが、興味のある方は、竹崎観望所からの見学を目指して、是非「種子島宇宙検定」に挑戦してみてはいかがでしょうか。

 最後に、ご招待いただきました種子島観光協会の事務局長様はじめ皆様には、大変お世話になりました。
 途中にも書きましたが、一生の思い出になりました。ありがとうございました。

|

« 韓国・麗水万博、3つの”推し” | トップページ | 韓国・羅老宇宙センターで見たものは »

コメント

目篭様
感動のブログ有難うございました。ご連絡頂いて、直ぐに感想を入れたかったのですが、超多忙で失礼しました。ほんとに大変な見学会でしたね。数年前、種子島宇宙センターを見学して来ましたので、現場の状況がわかり、読ませて頂きながら、胸がワクワクしていました!!素晴らしい経験をなさって、良かったですね。難しい検定試験を、上位で合格も凄いです!目篭様の本音も、全くその通りで…こんな困り者、必ず居ますよね(∋_∈)しかし、一生の思い出に残る感動、おめでとう!バーバラも少しだけ!?頂戴しました。有難う(*^ー^)ノ♪バーバラみちこ

投稿: バーバラみちこ | 2012/07/28 11:45

私も打上げ見てました。
初めましてです。
「クラブツーリズム」のツアーで、ロケット打上げ見物と種子島・屋久島観光セットの3泊4日。
偶然にも、打上げ後の昼食、同じお店でした。

機会があればもう一度、今度は打上げ施設の見学をしたしなぁと思っています。

投稿: ワッチ | 2012/07/29 09:41

バーバラみちこ 様、ワッチ様
コメントありがとうございます。

 種子島宇宙検定を受験すると、普段見れない施設まで見学できますので、受験に合格する、しないにかかわらず楽しめますので施設見学するならお勧めです。

>バーバラみちこ様

 いつも詳細なコメントをありがとうございます。
 大変恐縮です。

>わっち様

 種子島観光協会さんの推薦なので、ツアー会社も利用するのでしょう。
 確かにおいしかったですね。
クラブツーリズムでそんなツアーがあるとは知りませんでしたが、宇宙に理解のある旅行会社ですから、なるほどと納得です。

投稿: 目篭 | 2012/07/29 23:49

 H-IIB/F3は私も現地で見ていました。
 竹崎から射点を挟んだ反対側の地からですが、打ち上げ直前に射点の向こうに降雨の柱が確認できて、周りの人達と「あ~。射点の向こう側、雨降ってますねぇ」と呑気に見てました。
http://twitpic.com/aa2l0u
 当日は竹崎には知り合いが何人か詰めてましたが、やはり全員ズプ濡れになったそうです。

 私が居た場所は雨は降らず、時折ぱらついただけ。毎回のように天候には翻弄されますね。
http://twitpic.com/a9wih6 http://twitpic.com/a9wir3

 次回は来年度でしょうか?もし現地でお逢いできる機会がありましたらよろしくお願いします。(^^)/

投稿: 霧島 | 2012/11/05 07:15

霧島様

 コメントありがとうございます。
 また、今年のふもとっぱら(注)では大変お世話になり、ありがとうございました。

 竹崎はまさにあの瞬間が大雨でしたが、霧島様のリンクにある写真を見ると、本当にあのあたりだけ局地的に大雨が降っているのがよくわかります。
 すばらしい写真ですので、是非記事をご覧の皆様もリンク先をご覧ください。

 残念ながら、来年の種子島打上げに行くのは、今の時点では難しそうな気配です。
 また、どこかでお会いできることを楽しみにしております。
 ありがとうございました。


(注)目篭の、ふもとっぱらなどでのモデルロケット活動については、この画面左側の「こんなこともやってます」からのブログ「のしろケットちゃん3D化計画」に書いていますので、こちらもよろしくです。

http://mekago.cocolog-nifty.com/noshiroket/cat22774985/index.html

 
 

投稿: 目篭 | 2012/11/05 07:43

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 雨を突いて飛ぶ!HIIB3号機打ち上げ見学:

« 韓国・麗水万博、3つの”推し” | トップページ | 韓国・羅老宇宙センターで見たものは »