羽生・金メダルの日の弓弦羽神社
羽生結弦選手が、ソチ五輪フィギュア男子フリーで金メダルを獲得した。
「弓弦羽(ゆずるは)神社」では、「名前が似ている」という理由で、ファンが羽生選手にお守りを贈った縁で、羽生選手自身も参拝しているらしい。 ところで、この「弓弦羽神社」がある「御影」(正確には神戸市東灘区御影郡家)は、私の住んでいる「六甲」の隣の駅である。
なので、さっそく行って来ました。
羽生選手が金メダルを取った2014年2月15日(土)の「弓弦羽神社」の様子と、せっかくなのでこの神社がある「御影」とはどんな所なのか、ご紹介したいと思います。
(2015.02.15取材)
弓弦羽(ゆずるは)神社
たしかに、神社の名前は「ゆづるは」神社であって、「ゆうげん・はね」神社ではありません。が、「ゆ」の字は「弓」で、「結」じゃないわけですから、本来はそんなに似ているわけではないのですが、なにしろ本人の羽生選手自身が参拝に来てしまったわけで、そりゃ聖地になりますよね。
もともと、この「御影」という土地は、神功皇后が朝鮮征伐の帰りにご自身の姿(御影:みかげ)を池に映された、というのが名前の由来で、その時に、弓矢(弓弦羽)を奉納し、熊野権現を奉って建立したのがこの神社だそうです。
神功皇后が、戦争が終わって装束を解き、弓矢を納めて、御身を池に映し、身づくろいをした場所、ということなのでしょうか。
写メする人たち
と、いうわけで、鳥居の前ではケータイで写真を撮る人たちが。右端の女の子もよく見ると写真を撮っている所なのがわかります。
この記事の写真はすべて金メダルを取った当日のものですが、話題にはなっているものの、それほど混んでいるわけではありません。
びっくりしたのは、車で乗り付けて、車から写真だけ撮ってそのまま行っちゃう人です。こういうのは『話題の弓弦羽神社!』とかタイトルつけてツイートするだけなんだろうなぁ、って、私もまあ、大きく言えば似たようなものではあります。
マスコミの人も
当然、マスコミの人も来ています。どちらかというとメインのニュースというより「押さえに撮っとくか」みたいな感じでしょうか。私は30分ぐらい神社にいたのですが、最初に会ったこの一組のほかに、帰り際に別の一組が来ていましたので、これもそれほど多いわけではありません。
神戸一の椋の木
神社の中に入ると参道右手には、樹齢350年という、神戸で一番大きな椋(むく)の木があります。ちなみに、左手奥には、樹齢250年の楠(くすのき)が、本殿の後ろには樹齢450年の楠もあります。まあ、神功皇后といえば1800年くらい前の話ですから、400年や500年ぐらいの木が境内にあっても全然不思議ではないわけです。
そりゃ失礼だわ
さきほど、参道左手が駐車場になっていましたが、どうやら境内でUターンをする人が多いらしく、轍の跡が。確かにそりゃ失礼千万。ちなみに写真奥に見えるのが拝殿です。
御影石の力石
境内は思ったより広く、いろいろなものがあります。これは力石(ちからいし)と言って、この石を持ち上げて力自慢をしたもの。
気がついている方もおられると思いますが「御影」というのはもちろん「御影石(みかげいし)」の「御影」で、かつては六甲山系の花崗岩(「御影石」)の産地だったわけです。なのでこの力石も当然御影石。
犬の水飲み場
場所的にはちょっと戻りますが、これは「犬の水飲み場」。
後ろの看板、左側には...。
散歩の犬君へお願い
と書いてあります。飼い主の方にいくら言っても聞かないので、犬の方に言うことにしたのでしょうか。
他にも境内にはいろいろあるのですが、どんどん羽生選手と関係ない方に行ってしまうので、先を急ぎます。
話題の絵馬
いよいよ、報道でもおなじみの「絵馬」です。表を向いているのが、羽生結弦選手関係の絵馬。たぶん、マスコミの人がカメラで撮り易いように表を向けたのだと思います。
逆に言うと、羽生選手関係の絵馬とそうでない絵馬の比率もわかります。
これぐらいの比率の所も
絵馬は2面あって、上の写真とは別の面の一角。ここでは、これだけある中で羽生選手関係の絵馬は1枚だけです。基本的には永きに渡る御影地域の鎮守様なわけで、羽生選手専用の神社というわけでもありませんから、まあ妥当なところでしょう。
「勝守」
前述のように、弓弦羽神社は御影の鎮守なので、社務所には、安産から縁結びから学業から厄除けから、ありとあらゆるお守りがありますが、羽生結弦選手にあやかるならば、やはりお土産はこの「勝守」でしょう。なんといっても、最近では数少ない日本の「金メダル」ですから。
弓弦羽神社の場所
で、弓弦羽神社の場所ですが、阪急の御影駅からすぐです。鳥居のある表の参道に回っても駅から5分くらいだと思います。裏参道はいわば出口ですから、できれば表参道から行くのがよいでしょう。
赤い所が神社ですが、黄色い所は、せっかくなので、いったい「御影」とはどんなところか、というお話を次にするための印です。
駅前の一角に、パン屋とケーキ屋が4つもある
駅前の黄色い一角、ここにパン屋とケーキ屋が3軒、に駅の向かいに洋菓子屋がさらに1件あります。自由が丘のような商業地域なら別におかしくもありませんが、御影というのは純然たる住宅地で、逆に言うと、この駅前以外には店らしい店もあまりありません。
ちょっと説明が足りませんでしたが、神社のある周辺の「御影郡家」というのは、神戸の表側の中で、最後まで区画整理ができなかった所です。
なぜ区画整理ができなかったかというと、ふつう、区画整理される側は、代替の土地や家屋をもらった上にお金が入る。つまり儲かるので、区画整理に協力するのですが、郡家のあたりは、ものすごい大金持ちが多いので、お金をもらっても別に嬉しくない。
それより、自分の住み慣れた所、自分が丹精こめた庭など愛着のある家を手放す方が困る、というので家を手放さない為、区画整理ができなかったというわけです。
駅前の一角の写真
写真左の低い建物が阪急御影駅、そして、目の前のマンション群が地図で黄色く示したところです。このマンション群の一階が駅前のいわば商業施設で、その中の3つがケーキ屋とパン屋です。更に写真を撮っているちょうど背中側にケーキ屋がもうひとつ。
まずはケルン
いったい何がそんなに問題なのかというと、それぞれのパン屋、ケーキ屋が、恐らくは神戸市外の人にも有名なお店なのです。そんなお店が歩いて1分くらいのところに4つもある。いや、デパ地下やショッピングモールでは当たり前でしょうが、ただの住宅地の真ん中に。
さて、ケルンは、後述するケーニヒスクローネとの関係でひとくくりにしましたが、ケーキ屋さんではなく、純然たるパン屋さんです。昔も今も安定のおいしさ。
ケーニヒスクローネ
ケーニヒスクローネは、今では日本中に展開しているので、ご存知の方も多いと思うのですが、もともと御影が発祥の地。
私なんかはケーニヒスクローネといえば「パン」というイメージが強いのですが、今は洋菓子の方が有名になってしまいましたね。
ケルンとケーニヒスクローネが同じ一角にあるというだけで、私にはもう驚愕。
アンプレシヨン
店名は正確には英文字で「impression」。ケーキ屋さんです。この1角の3軒の洋菓子屋さんの中では、多分一番おいしい。
だったら、ここで買うかというと、実はですね、少し離れてはいるのですが、先ほどの「結弦羽神社」がある地図がちょうど切れているすぐ下あたりに、以前神戸空港の記事でご紹介した、現在の神戸で一二を争う洋菓子の名店「ダニエル」がありまして...。
なので、ますます、ここの一角に3つも洋菓子屋があるのが、よくわからないのですよ。
高杉
で、高杉です。
「ダニエル」や「ケーニヒスクローネ」にはイートインはないし、「アンプレシヨン」にはイートインコーナーはありますが小さいので、「弓弦羽神社」参拝の後にゆったりとくつろぐなら恐らくここでしょう。
洋菓子の味が落ちる原因
高杉は、数々の受賞に輝く名店ですが、私が神戸を離れてからできた店なので、私は最盛期の高杉を知りません。帰ってきたときにはもう「味が落ちた」という評判でした。
もちろん「味が落ちた」とは言っても、それは比較の問題で、「まずい」という話ではありませんが。
今回初めて高杉のケーキを食べましたが、元の味を知らないものの、「味が落ちた」と言われるのは、一つには恐らくスポンジのせいだと思われます。
昔の神戸のケーキにはおいしい3つの要素がありました。そのうち1つは神戸空港の記事に書いたと思います。
そして、その2つ目は「切っても切れない、しっとりとしたスポンジ」です。
今ではもう見る影もありませんが、まだ、中山手でたった一軒のお店だった頃の「フーケ」のケーキの素晴らしさは、包丁を温めようが、お湯で濡らそうが、とにかく何をやってもスポンジをきれいに切ることができない。それほどしっとりとしてやわらかいスポンジだったのです。
それが、なぜパサパサになってしまうのか。答えは簡単。
『スポンジを冷凍する』からです。
誰が「スポンジを冷凍して解凍しても味が変わらない」と考えたのでしょうか。
決してそんなことはありません。スポンジは冷凍して解凍したらパサパサになります。
少なくとも味は確実に落ちます。
かつて神戸には港や大企業以外には産業がなく、産業としての「洋菓子」に目をつけた神戸市は、町の小さな洋菓子屋さんにもたくさんの金を低利で貸付け、産業として振興することを狙ったのです。
この結果、多くの洋菓子屋さんが事業を拡張し、日本全国のデパ地下洋菓子売場の半分ぐらいを神戸ブランドが占拠するようになったのですが、その見返りとして、「味が落ちて」しまった。大量生産するために「スポンジを冷凍」するようになってしまったのです。
横浜そごうの「アンリ・シャルパンティエ」でケーキを食べた時、「これが私たちの青春のアンリか」と思うと本当に情けなくなってしまったものですが、更にこのおかげで、全国の地方の洋菓子屋さんの中に、神戸よりおいしい、という所も出てきてしまった。
腕のあるパティシエで、小さなお店なら、スポンジを冷凍せずに済みますからね。
神戸市の産業施策のせいというわけですが、自分の奥さんや子供のために、「洋菓子の味」よりも「会社の社長さん」になることを選んだ多くのパティシエの方にも問題があったのかもしれません。
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