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のしろサットちゃん(デフォルメタイプ) 3Dプリンター苦労話

Sippai

 のしろサットちゃん(デフォルメタイプ)3Dプリンター出力について、苦労話をするお約束(上記の写真)をしていましたが、やっと能代の報告も一段落したので、お約束を果たします。

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 「のしろサットちゃん(デフォルメタイプ)」は、2013年能代宇宙イベントで、「のしモデルロケットちゃんII号(量産型3号機)」から放出され、画像等を記録して着地した「缶サット」の一種で、上の写真の3Dデータから、3Dプリンタ(Cube初期型)で出力されたものです。

  打上の様子は、目篭のモデルロケットブログ の
     「能代結果報告その2:のしろサットちゃん(デフォルメタイプ)
  3Dプリンタで出力されたサットについては、当ブログ内の
     「のしろサットちゃん(デフォルメタイプ)ついに完成
  をご参照ください。

  ところで、これこそまさに「のしろケットちゃん3D化」そのものなので、3Dプリンタ出力上のあれこれについて、以下に記します。

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前掛けと髪の毛が出力されない

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 写真は、最初に出力したものですが、前掛けの部分と、髪の毛が出力されていません。
 なので、あわててプリントを中断しました。
 3Dプリンタ出力ソフトには、何が原因でこうなるのか、というメッセージは表示されませんので、該当部分のモデリングをためつすがめつ、眺めます。

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開いた形状

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 これからするお話は、ひょっとしたら、スプラインモデルを使う3DCGソフトにしか関係がないかもしれません。世の中の3DCGソフトの主流はポリゴンモデルと言われるものです。
 代表的なスプラインモデルの3DCGには「Shade」がありますが、私が使っているのはAnimation Master というソフトです。

 さて、髪の毛のモデリングを見てみると、ここの所が「開いた形状」になっていることがわかります。「開いた形状」というのは、ここでは、全体が1枚の紙のようなものでできていて、「紙の端」がある感じです。上の写真をよく見ると、ただ紙がしわくちゃになっているだけのような構造であることがわかります。つまり、ここのモデルは2次元なわけです。

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押し出して立体にする。

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 どうやらこの2次元の「紙」を立体にしなければ、3Dプリンタでは出力されないようです。 この場合、立体になった形のモデルを「閉じた形状」といいいます。
 実は、髪の毛は下に述べる前掛けの後にやったので、疲れていて、結構強引な方法で「閉じた形状」にしています。「エクストルード」という「押し出し」みたいな機能で、一気に「紙」を立体化しました。(上の写真)

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「前掛け」は、手で「閉じた形状」に

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 前掛けの方も、色が白なのでわかりにくいですが、「開いた形状」になっていました。
一部分は閉じているのですが、開いている部分があって、立体として完成していません。

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「前掛け」は手で繋ぐ

Tojita

 「前掛け」は一部閉じているので、残りの部分を線でつないで閉じます。写真が「閉じた形状」になったところ。なんとなく「開いた」と「閉じた」の感じが理解できたでしょうか。

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相変わらず「前掛け」が出力されない

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 2つの修正を行って、いよいよこれで完成、と思ったのですが、やはり「前掛け」の部分が出力されていません。更にさっきは途中で止めたのでわからなかったのですが、頭の「ロケット帽子」も出力されていません。一回の出力に10時間ぐらいかかるので、ダメージは大きいです。

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「法線」かもしれない

Housen

 「これで完成だ」と思っていたものが駄目だと、もうどうしていいかわからなくなりますが、ふと、「法線」というものがあるのを思い出しました。

 「法線」というのは、モデルのある「面」(多くは4つの点で囲まれた所)がどちらを向いているか、ということを示すもので、写真では黄色い線で表されています。太い方から細い方への方向がどちらを向いているかを表しています。

 この方向が全部揃っているのが正しいので、この場合は全部外側に向いているのが正しいわけです。

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こ、ここの面が

Konoheimen

 そこで丹念に一つずつ調べていくと、写真でわかりやすいように黄色に塗った所の面の、法線が内側に向いているではありませんか。

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こ、この法線が

Konohousennga

 ちょっとわかりにくいですが、写真の法線が1つだけ短い(内側を向いている)のがわかるでしょうか。

 「前掛け」は、手で「閉じた形状」にしたので、このように手で繋いでいくと、よく法線の反転が起こります。

 図などは、省略しますが、「ロケット帽子」も、後で針金を通す為の穴を作ろうとして、手でいじった所の法線が1つだけ反転していました。

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3回目の出力

Print3

 これで完璧のはず、とか思いましたが、ロケット帽子の周りにある4箇所の羽根の、下半分が出力されていません。さっきはロケット帽子自身が出力されていないのでわからなかったのでした。

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「羽根」の法線は無茶苦茶

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 そこで羽根の部分を見てみると、案の定、法線がめちゃくちゃで、下の部分は内側を向いています。ここは手で線を繋いで四角形と三角形を作ったので、法線がめちゃくちゃになる傾向があります。あと、複数の閉じた形状のよせあつめになっているので、本当はシンプルな一つの形状にしておいたほうが良いです。

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出力されない箇所は事前に表示されている

Cubify

 ここまでに3回出力を行い、4回目に完成したわけで、1回の出力に10時間ですから、実質は1日1回の出力で、4日間かかっていることになります。

 全部作業が終わったあとで気がついたのですが、Cubeに出力するソフトの画面では上記のようになっていて、今まで説明してきた所は黒く表示されていました。従って、この画面で黒く表示されている所の「閉じた形状」と「法線」を確認すれば、いちいち出力して確認しなくても良かったみたいです。

 マニュアルにもヘルプにも記述がないというのもありますが、もう一つは、写真でもわかるとおり、「ロケットノズル」や「のしの形をした帯」の部分など、正常に出力されている部分でも黒く表示されているので、この黒い部分がエラー表示だとは、ちょっと気がつきませんでした。
 逆に言うと、モデル的にはおかしいのかもしれませんが出力はできる所も、一生懸命調べて直す手間がかっていまう可能性もないではありません。

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 垂れる

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 これまでの写真でお気づきの方も多いかもしれませんが、ロケット帽子の下の部分、髪の毛の部分に線が垂れています。

 ちなみに「のしろサットちゃん(デフォルメタイプ)」では、この部分はちょうど髪の毛にあたるので、一部は残し、不自然な所は切り取っています。

 これはエラーとかバグとかではなくて、Cubeのような、樹脂の細い棒を熱しながら積み重ねていく形(積層型)の3Dプリンターの宿命です。

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斜めに延びていく時はいいが...

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 少し説明しますと、積層型の3Dプリンタでは、ちょうどヘビがトグロを巻くように細い樹脂の棒(フィラメント)をぐるぐると回しながら重ねています。(トグロだけでなくロクロにも近いでしょうか。)そこで、上に向かってだんだんに広がっているようなもの(上の図)であれば下のフィラメントが支えになるのでいいのですが、

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水平に伸びようとすると、落ちる

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 まっすぐ水平に伸びようとすると、支えるものがなくて、フイラメントが落ちてしまいます。これが「垂れ」になります。 

 前述のように、これは避けられないことなので、モデルの方で工夫するしかありません。
 「のしろサットちゃん」でも当初このことはわかっていて、たとえば髪の毛のところは別パーツで上向きに作ってあとで組み合わせる、などを考えていたのですが、「のしろサットちゃん」製作過程でカメラやブザーの大きさを測り間違えていたことがわかり、直前で3Dモデルが大幅な仕様変更となった為、分割したり組み合わせたりする時間がなくなってしまったのでした。

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変な仕切りが入る

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 これも同じくこの型の3Dプリンタの避けて通れない所だと思うのですが、内部に、3DCG上にはなかった、変な仕切り板が入ります。
 (写真は、途中で止めた1回目の出力を上から見たところ)
 これは、強度を補強すると言うよりは、3Dプリンタが形を描くにあたって、自分が書きやすいように補助的に入れているものと考えた方がいいです。
 上でも述べたように、この3Dプリンタはへびがトグロを巻くようにフィラメントを置いていきますので、「一筆書き」になるわけです。「一筆書き」でいろいろな形を書こうとすると、どうしても要らない線でつなぐしかなくなってくるわけですね。

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バリバリと折り取る

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 変な板は、垂直方向だけではなく、水平方向にもできます。写真上は、下から見たところ。真ん中のぐしゃぐしゃしたものは単なる「垂れ」です。
 ところで、「のしろサットちゃん(デフォルメタイプ)」では、中にカメラやブザーなどの機器を入れなくてはいけないので、このような縦や横の「変な板」があっては困ります。
 そこで、カッターで切ったり、ニッパーで無理やり折りとったりしながら、中を空けていく(写真下)わけですが、これがなかなか大変な作業で、時間がかかります。

 なお、写真下で最下部の「ツメ」の部分が欠けていますが、誤って欠けたわけではなく、ツメの強度試験をした後の2番目の出力を使って、バリバリと折り取るところを再現した為です。

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終わりに代えて

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 ここで書いた「開いた形状」や「法線」のは3DCGをやっている人にとっては、きわめて基礎的で初歩的な事なので、あまり勉強になる話ではなく、「のしろサットちゃん(デフォルメタイプ)」を作るにあたっての、目篭の単なる苦労話と思っていただいて結構です。
 しかし、3Dプリンタの出力については、ここに書いた「垂れる」とか「仕切り」とかいうことの他にも、写真を見ていただいてわかるように「精度が悪い」とか、フィラメントがほんのわずかに熱で相互にくっついているだけなので、本来の素材(この場合だとABS)に比べて「強度が低い」など多くの問題があり、「3DCGを何も知らない人が飲み屋で酒の肴にする」ほどの「夢の道具」ではありません。

 最近では、3Dプリントの専門家の方もあちこちでこのことについて書かれていますので、 あまり夢を広げる前に、是非それらのドキュメントを参考にしてください。

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